EUデータ法案に政治合意も、産業界からは不満や要望

(EU)

ブリュッセル発

2023年07月07日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会が627日に暫定的な政治合意に達したデータ法案(2023年7月6日記事参照)を巡り、欧州のデジタル関連団体から不満や要望の声が上がっている。欧州委員会の発表時から産業界は懸念を示していた(2022年2月28日記事参照)。

情報通信技術(ICT)関連産業団体のデジタルヨーロッパは628日、EU機関内の交渉を経て前向きな修正が加えられたものの、合意内容に失望したと述べた(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。特に企業秘密やサイバーセキュリティーなどの保護が不十分だとした。企業が自社の機密性にリスクがあると証明できれば、データの提供を拒否できるようにし、企業秘密などを確実に保護することが必要と指摘。ガイドラインとデータ移転に関する契約のひな型を共同で作成し、実務レベルでテキストを微調整することを提案した。

ブッキング・ドットコムなど欧州発のテック企業30社が加盟する欧州テック連盟(EUTA)も同日、法案の大枠には支持してきたが、合意を優先したことで最終テキストは曖昧さが残り、全体的に法的一貫性がないと述べた(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。主要な用語の明確な定義、EUの一般データ保護規則(GDPR)との整合性、知的財産権の保護、公的機関にデータ提供を行う際の企業に対するセーフガードや相互運用性の必須要件といった点で不十分な点があると指摘。欧州委に対し、データ法の円滑な運用に向け、関係者と協力しながら積極的な役割を果たすように求めた。

自動車部品業界、データ共有が進むと歓迎

一方で、データ法への期待を示す団体もあった。欧州自動車部品工業会(CLEPA)は、合意テキスト細部の検証前としながらも、第三者企業が最終消費者に革新的なサービスを提供することができる重要な一歩となる「水平的な法令」と評価(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。自動車部品業界は新たなビジネスにつながる可能性がある車載データについて、現況では完成車メーカー側からの情報提供が不十分との認識を持っており、同法は消費者を中心に据え、データ保有企業に提供義務が課されたと合意内容を歓迎した。同時に、データ法単独では自動車部門のデータ関連サービスの複雑さに対応するには不十分とも指摘。欧州委が同法を補完する目的で策定中の産業部門ごとの関連法令を2023年秋までに提案することを求めた。

(滝澤祥子)

(EU)

ビジネス短信 f555d6231b005ab6