欧州委のデータ法案、欧州産業界からは懸念の声も上がる
(EU)
ブリュッセル発
2022年02月28日
ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は2月23日、欧州委員会が同日発表したデータ規則案について声明を発表した(プレスリリース)(2022年2月28日記事参照)。ビジネスヨーロッパは、欧州企業はグローバルなデータ競争に直面しており、賢明かつ競争力のある法的枠組みが必要だとした上で、市場メカニズムが機能しているとの前提の下、データ法が規定するデータ共有によってEU企業が投資、成長する際の障壁となってはならないとクギを刺した。また、公的部門へのデータの提供については、「新型コロナ危機」を例に挙げて、緊急事態に対処するため、企業側はこれまでも協力してきたと指摘。このほか、(1)顧客情報や新製品情報などの企業秘密の機密性が損なわれない、(2)EUの一般データ保護規則(GDPR)や知的財産権との一貫性を持たせる、(3)安全で互換性、ポータビリティー(可搬性)があり、公開性の原則に基づいたクラウドインフラを通じてデータ共有枠組みを設計することが重要だとした。声明ではまた、EU・米国間にデータ移転枠組みがないことから、欧州企業が法的な不確実性やコスト増加に直面しているとして、強固な仕組みの設計と速やかな採択を支持するとした。
データの越境移転の制限に反発
欧州の情報通信技術(ICT)関連産業団体デジタルヨーロッパも同日、声明を発表した(プレスリリース)。デジタルヨーロッパは、データ法案がコネクテッドデバイスに蓄積されるデータの利用について明確化し、公的部門へのデータ提供についてルールを設定することを評価した。また、欧州委が拘束力を持たない契約条項モデルを策定、推奨することについて、データ共有の契約交渉を最初から行う経験、法的資源、能力が不足しがちなスタートアップや中小企業にとって有用として、歓迎。ただし、モデルの策定に産業界も関わるべきだとした。
一方で、法案には懸念すべき点もあるとして、例えば、データ共有に関する企業間契約は引き続き任意で商業的に実行可能なものとすべきで、競争法に抵触しない限り、企業間の緊密な連携を可能とする仕組みといった企業間のデータ共有への支援やインセンティブが必要だとした。また、データへのアクセスや共有について、企業間と企業・消費者間それぞれ個別に的を絞った方法が求められると指摘した。
データ法案はGDPRよりもさらにデータの越境移転を制限しているという懸念も示した。デジタルヨーロッパは、欧州の中小企業の60%以上がデータの越境移転をしていると推測され、移転が制限されると、これらの企業の成長や競争力強化の足かせになると反発。声明の最後で、欧州委は絶えず新しい規制を課すのではなく、欧州企業がビジネスを行う上で国際的に優位に立つために努力すべきだと訴えた。
(滝澤祥子)
(EU)
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