6月のCPI上昇率は前年同月比38.2%、市場予測を下回る

(トルコ)

イスタンブール発

2023年07月13日

トルコ統計機構(TUIK)の発表(7月5日)によると、6月の消費者物価指数(CPI外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)上昇率は、市場予測をわずかに下回る前年同月比38.21%となった。同様に、国内生産者物価指数(D-PPI外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)も同40.42%に低下した。ともに前年同月のベース効果が主因とみられる。

6月の全体のCPI上昇率は、前年同月が78.62%と高かったことによるベース効果で、予想以上に低い伸びとなった。なお、前月比では3.92%の上昇となっている。項目別にみると、原油価格の上昇や通貨トルコ・リラ急落を要因に、エネルギーが前月比で4.23%の上昇となったが、前年同月比では2022年6月の151.33%上昇(前年同月比)から16.52%下落に抑制された。耐久消費財は、前月比6.64%、前年同月比で43.30%の上昇と高水準にある。また、食品・飲料は、生鮮野菜・果物価格の上昇もあり、前年同月比で53.92%の上昇だった。

他方、サービス部門では、不動産賃貸価格が前年同月の22.80%から75.91%へと急上昇したこともあり、部門全体のCPI上昇率も、前年同月の48.69%から59.45%に上昇した。レストラン・ホテル(67.22%上昇)、通信(43.84%上昇)、教育を含むその他のサービス(57.42%上昇)など、同部門で抑制の遅れが著しい。

D-PPI上昇率は、6月に国際商品価格の低下がみられたものの、通貨リラ急落の影響で、前月比6.50%の上昇となったが、前年同月比ではベース効果で前年同月の138.31%から40.42%の上昇にとどまった。項目別では、エネルギーが前年同月比で10.26%、前月比では12.67%の上昇となお高水準にある。この結果、関連産業全体への上昇圧力が高まっている。

トルコ中央銀行は6月22日、政策金利を15%に引き上げ、金融政策の転換を期待させている(2023年6月26日記事参照)。しかし、大統領選挙前と比較して通貨リラが対ドルで23%超の急落となったことをうけ、夏期を通じて物価の上昇圧力が強まるとみられている。加えて、7月に発効された最低賃金の引き上げ(2023年6月23日記事参照)や付加価値税の税率引き上げ(2023年7月11日記事参照)は、インフレを悪化させる可能性が指摘されている。インフレ抑制に向け、状況を楽観視できる材料は少ないとみられる。

中央銀行の発表と同時に発表された独立調査機関ENAグループの調査結果によると、6月のCPIは前月比8.54%、前年同月比108.58%の上昇とされ、なお政府発表からは大きく乖離している。

(中島敏博)

(トルコ)

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