2022年の中南米直接投資受入額、前年比55.2%増、過去最高を記録

(中南米)

サンティアゴ発

2023年07月25日

国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)の710日付の発表によると、2022年の中南米地域の外国直接投資(FDI)受入額は前年比55.2%増の2,2457,900万ドルで、ECLACの調査開始以来の最高額を記録した。域内全体のFDI2,000億ドルを超えたのは2013年以来。この結果は、主に一部の国、特にブラジルで利益の再投資やサービス分野へのFDIが増加したためで、新型コロナウイルス禍からの回復を反映しているとECLACは説明している。

2022年のFDI受入額を国別にみると、上位5カ国はブラジル(構成比:40.7%)、メキシコ(17.3%)、チリ(9.3%)、コロンビア(7.5%)、アルゼンチン(6.9%)で(添付資料表1参照)、南米はボリビア以外の全ての国(データが確認できないベネズエラを除く)で前年比増だった。中米では、コスタリカが前年比2.2%増の367,300万ドルで、FDI受入額全体に占める割合は1.6%だった。カリブ海諸国ではガイアナとドミニカ共和国が上位にランクインし、FDI受入額はどちらも40億ドルを超えた。

中南米12カ国(注)のFDI受入額を分野別にみると、サービスへの投資が全体の54%を占め、製造業(30%)と天然資源(17%)と続く。サービスは主に金融サービス、電気・ガス・水道、情報・コミュニケーション、運輸関連への投資が多くを占めた。製造業への投資は2013年以来減少傾向が続くが、2022年は前年比47%増となり、主にブラジルでコークス精製、石油派生品、バイオ燃料、自動車産業への投資が行われた。

域内最大のMA案件は、スペイン語コンテンツ配信大手の米ユニビション・コミュニケーションズと、メキシコのメディア放送最大手テレビサが合併した案件で、投資額は48億ドルだった(添付資料表2参照)。オーストラリアのサウス32は、住友金属が所有していたチリのシエラ・ゴルダ銅鉱山の権益45%を買収した。同社は既にブラジルとコロンビアで鉱物採掘事業に参画し、中南米でのプレゼンスを高めている。ほかにも、タイのインドラマ・ベンチャーズがブラジルの石油化学大手オキシテノの買収や、中国のガンフォン・リチウムがアルゼンチンのリチウム事業買収などが行われた。

ECLACは、中南米地域のエネルギー転換を加速し、技術移転を促進する上で、FDIは今後重要な役割を果たすとみている。具体的には、中南米の各国政府は、非再生可能エネルギーから再生可能エネルギーへの転換を促進する長期的な政策を策定することが重要で、持続可能な生産的開発プロセスを前進させる戦略的ツールとしてFDIを利用することが不可欠と指摘している。

(注)分野別のデータを公表しているボリビア、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ガイアナ、ホンジュラス、ジャマイカ、メキシコ、ドミニカ共和国の12カ国。

(岡戸美澪)

(中南米)

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