中国、「対外関係法」を施行、対外関係で企業や個人にも国家利益の保護を義務付け

(中国)

北京発

2023年07月03日

中国で6月28日、「対外関係法」が全国人民代表大会(国会)の常務委員会第3回会議を通過外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、7月1日の施行が決定した。同法は、外交や経済・文化面などの交流・協力などに当たって守るべき原則などを定めたもの。2022年12月に草案が発表されていた(2023年1月10日記事参照)。

第1条では、法律の目的として、対外関係の発展、国家主権・安全保障・発展の利益の維持、人民の利益の維持などのほかに「世界平和と発展の促進」が追加された。

第3条では、草案では対外関係の指導思想として、「習近平の新時代の特色ある社会主義思想」のみが記されていたが、マルクスレーニン主義、毛沢東思想、「三つの代表」重要思想、科学的発展観が追加された。一方、「憲法の規定、原則と精神に照らして」という文言は削除された。

第6条では、対外交流において政党や団体、企業や個人などが守るべき項目が「国家の安全、名誉、利益」から「国家の主権、安全、尊厳、名誉、利益」に拡大した(草案では第7条)。

第18条では、中国が提唱する「グローバル発展イニシアチブ」「グローバル安全保障イニシアチブ」「グローバル文明イニシアチブ」の推進が盛り込まれた。

第26条にある対外開放については、「質の高い」という文言が追加され、外資系企業の投資推進・保護を「積極的に」「法に基づき」行うとされた。

第33条では、中国の主権・安全保障・発展の利益に危害を加えた行為に対し、「法律に基づき必要な措置をとる」から「相当の措置をとる」に変更された。第34条は、草案で「国家は必要な法律、行政法規、部門規定を制定」とされていたものが、「国務院およびその部門は必要な行政法規、部門規定を制定」と変更された。また、同条での決定が最終決定になることが加えられた。

その他、草案第43条にあった「文化的ソフトパワーと中華文化の影響力を高める」という内容が削除され、第44条で「世界が中国をより良く理解し認識することを促進し、人類文明の交流と相互参考を促進する」に変更された。

外交トップの王毅・共産党中央政治局委員は6月29日付の「人民日報」で、同法により対外関係発展のための(1)指導思想が明確化された、(2)立法を順守するという全体的原則が確立された、(3)目標と任務が明記された、(4)制度が明確になった、(5)能力構築と保障が強化されたと評価した。

(河野円洋)

(中国)

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