ジェトロ、日系企業と常熟市市場監督管理局との座談会を開催
(中国)
上海発
2023年07月05日
ジェトロは6月20日、江蘇省・常熟市市場監督管理局(以下、常熟市監局)と日系企業の座談会を開催した。常熟市の万暁軍副市長をはじめ、常熟市監局などの関係者が参加し、同市の知的財産権訴訟などの状況や知的財産権保護のポイントについて日系企業向けに説明した。
常熟市監局によると、2022年の常熟市における各種知的財産権訴訟案件数は628件、罰金総額は3,015万元(約6億円、1元=約20円)だった。そのうち、商標権案件が535件(うち65件が刑事罰)、罰金総額は2,925万元となった。そのほかに、不正競争案件が113件、罰金総額は1,004万元だった。
常熟市の2022年の商標出願件数は1万5,113件、発明特許授権数は1,226件だった。累計有効商標件数は13万9,900件に達し、江蘇省の県区でトップとなった。累計有効発明特許件数は9,156件に上り、そのうち2件は「中国特許優秀賞」を受賞し、1件は「江蘇特許優秀賞」を受賞した。
また、常熟市監局は、商標権保護、営業秘密漏洩(ろうえい)対策、特許権保護や商業混合行為の防止など、企業活動と密接に関係する点についても紹介した。常熟市は「中国紡織産業基地」として、特有の特許保護メカニズムを構築している。テキスタイルやアパレルはデザインの変化が早いが、意匠権の認定までに時間を要し、意匠権の保護が間に合わないことが課題だった。そこで、蘇州市知的財産保護センター(注)は「速審通路(ファストトラック)」を開通し、意匠権および実用新案の審査期間を従来の平均6カ月から平均1カ月に短縮させ、発明特許の審査期間も平均22カ月から平均3カ月までの短縮を実現した。
常熟市監局によると、近年は商業混同侵害行為が増加している。工場名やその所在地の悪用や、商標権の侵害など、明らかな侵害行為は行政処罰や刑事責任を追及しやすいが、標識(主に商品名、包装、装飾)、名称(企業名、組織名、氏名)、ドメイン、サイト名、ホームページなどを悪用するケースがあるという。
常熟市監局は、商業混同侵害行為を防ぐために、類似商標の事前出願、意匠権や著作権などの事前権利登録が重要と指摘した。また、企業の法務や知財部門は、定期的に巡回を行い、類似商標、類似企業名、関連EC(電子商取引)店舗を見つけた場合、すぐに関係部門やECプラットフォームに異議申し立てを提出することも重要だと指摘した。
座談会会場の様子(ジェトロ撮影)
(注)常熟市は江蘇省蘇州市にある県級市で、蘇州市知的財産保護センターが常熟市の「速審通路」を対応している。
(陳貝蓓)
(中国)
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