ウクライナ産穀物輸出合意、7月18日まで延長

(ウクライナ、ロシア、トルコ、世界)

欧州課

2023年05月26日

国連は517日、アントニオ・グテーレス事務総長発言として、518日に期限を迎えていた黒海を通じたウクライナ産穀物輸出に関する合意「黒海穀物イニシアチブ」が60日間延長されたと発表した(2023年3月29日記事参照)。延長後の期限は718日となる。

イニシアチブ当事国の1つトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領も同日行われた与党・公正発展党の会合でイニシアチブの延長を明らかにし、これに対するトルコの貢献を強調した。エルドアン大統領によると、ロシア側は、黒海沿岸にあるウクライナのミコライウ港とオルビア港から出るトルコ船を妨害しないと明言したという。

ウクライナのオレクサンドル・クブラコフ副首相(復興担当)兼地方・国土・インフラ発展相は自身のSNSで、718日まで延長されたことを明らかにしたが、ロシア側が輸送船の新規登録や輸送船の検査を拒否し、事実上輸出を阻んでいると批判した。

ロシア外務省のマリア・ザハロワ広報官も17日の記者向けブリーフィングで、2カ月延長を認めた。同時に、イニシアチブ実施に当たっての「ゆがみ」が解消されていないと繰り返し訴えた。ザハロワ広報官は「ゆがみ」については明言しなかったが、外務省が4月に今後の延長条件として挙げていた、a. ロシア農業銀行のSWIFT(国際銀行間通信協会)への接続復活、b. ロシア向け農業機械・部品などの供給再開、c. ロシア穀物輸送船に対する保険・再保険規制と入港規制の解除、d. ロシアのトリヤッチとウクライナのオデーサを結ぶアンモニアパイプラインの操業再開を指すとみられている。

イニシアチブの正式名称は「ウクライナの港からの穀物および食料の安全な輸送に関するイニシアチブ」とされ、署名3カ国と国連が共同で、ウクライナのオデーサ、チョルノモルスク、ユージニーの黒海沿岸3港からウクライナ産穀物を輸出する船舶の安全な航行を確保することが目的。国連の発表(517日)によると、イニシアチブが20227月に署名されて以降、黒海を通じてウクライナ産穀物、食料が約3,000万トン輸出された。

(浅元薫哉)

(ウクライナ、ロシア、トルコ、世界)

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