「製造業の信頼性向上に関する実施意見」を発表

(中国)

北京発

2023年07月11日

中国の工業情報化部、教育部、科学技術部など5部門は630日、「製造業の信頼性向上に関する実施意見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。意見では、産業基盤が弱く、重点コア製品の信頼性とそれに関連した管理能力と専門人材の不足が製造業の高度化に向けた制約になっていると指摘した上で、機械、電子、自動車産業を中心にした製品の信頼性向上に向けた取り組みや目標を打ち出した(注1)。

信頼性の定義については、定められた条件と時間内で規定された製品機能を実現する能力とし、製品の研究開発、設計、生産、使用のライフサイクルに関わり、製品の品質を反映する中核指標とされた。

意見では、2025年までと2030年までの2段階で目標を設定している。2025年までに、(1)信頼性に関する共通技術の研究開発サービスプラットフォームを3つ以上構築、(2)信頼性向上のモデル事例を100件以上創出、(31,000社以上の企業による信頼性向上への取り組みを推進することを挙げた。また、2030年までに、10種類の重点コア製品の信頼性を世界先進レベルに引き上げることや、信頼性に関する公共サービス機関と専門人材を育成することを目指すとした。

具体的な取り組みとしては、品質と信頼性の管理レベルの引き上げ、信頼性エンジニアリングの研究開発と活用の加速、基本製品の信頼性を高める「基礎構築プロジェクト」と設備・システムの信頼性を高める「倍増プロジェクト」の実施、信頼性の標準体系の整備などを盛り込んだ。

「基礎構築プロジェクト」では、産業ロボット用精密減速機や、ハイエンドベアリング、SoC(システムオンチップ)・MCU(マイクロコントローラー・ユニット)・GPU(画像処理半導体)などのハイエンド汎用(はんよう)チップ、高精度カメラ・ライダー・基本演算プラットフォーム・OSなど自動運転システム、車載通信モジュール、車載半導体チップなどの信頼性向上を図る(注2)。

「倍増プロジェクト」では、マシニングセンタ、大型のNC工作機械、レーザー溶接・切断装置、ドローン、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)デバイス、サービスロボット、第5世代移動通信システム(5G)設備、Web会議システムの信頼性レベルを向上することや、新エネルギー車用ソフトウエアの性能・信頼性レベル、車載電池の劣化状態・寿命・安全性などへの評価力を引き上げるとした。

(注1)実施意見とともに発表された解説では、機械、電子、自動車の3つの業種に焦点を当てた理由として、これらの業種は産業規模や工業生産に占めるシェアが大きく、製造業の信頼性向上で代表性を持つためなどと説明している。

(注2)解説では、中国の精密減速機、ハイエンドベアリング、先進半導体材料、車載用チップなどの基本製品や大型のNC工作機械、先進農業機械、精密測量機器などの製品について、信頼性のレベルが高くないと指摘している。

(張敏)

(中国)

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