GPNKガスパイプライン第1期工事が完了、自給向上による外貨不足改善に期待

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年07月18日

アルゼンチン政府は79日、巨大シェールガス鉱区「バカ・ムエルタ」が所在するネウケン州トラタジェン市とブエノスアイレス州西部のサリケロ市を結ぶ全長573キロのネストル・キルチネル・ガスパイプライン(GPNK)の第1期敷設工事の終了を祝す記念式典を開いた。

既存のガスパイプラインとしては、NEUBA INEUBA IIがあるものの、これらの輸送能力不足が大生産地バカ・ムエルタから大消費地ブエノスアイレスへの天然ガス輸送のボトルネックとなっており、エネルギー輸入を減らして外貨を節約するためにも、その解消が急がれていた。

1期敷設工事に携わった地場企業はテチントグループ、SACDEBTUで、当初24カ月が予定されていた工期はわずか10カ月に短縮された。710日付の現地紙「ナシオン」(電子版)によると、総工費は約28億ドル。第2期工事ではサリケロ市からサンタ・フェ州南部サン・へロニモ市まで全長約484キロのパイプラインを敷設する。79日付の現地紙「アンビト」(電子版)によると、セルヒオ・マッサ経済相は第2期工事の入札を9月に行う予定と発表した。既存のノルテ・ガスパイプラインに接続し、アルゼンチン北部へガスを輸送するだけでなく、チリやブラジルへの輸出も可能となるという。

79日付の現地紙「エル・クロニスタ」(電子版)によると、今回完成したGPNK1区間が100%稼働するのは、微調整が完了する717日から20日の間で、これによって輸送能力は日量1,100万立方メートルとなる。202310月から11月にかけて予定される3つのコンプレッサーステーションが稼働すれば、輸送能力は日量2,400万立方メートルまで増える。第2期工事完了後の2025年には、輸送能力は日量4,400万立方メートルの見込みだ。

複数メディアによると、国営石油会社YPF社のアドバイザーを務めるシンクタンクCEPAのエルナン・レッチェル氏は、GPNK1区間の稼働によって2023年は液化天然ガス(LNG)輸入を約10億ドル削減できるとの見通しを示した。政府は、2022年のエネルギー輸入額は1286,800万ドルに上ったが、2023年には87億ドルまで縮小すると見込んでいる。また、第2区間が稼働すれば、年間約40億から43億ドルの輸入が削減できるとみられ、国営エネルギー会社エナルサのアグスティン・へレス社長は、2025年にはエネルギーの貿易収支を黒字化できるとしている。

79日付の現地紙「アンビト(電子版)」によると、政界だけでなく、アルゼンチン工業連盟(UIA)をはじめとした産業界も「(GPNKの建設は)官民が共同で実現できた重要な出来事」で、「国産エネルギーの安定的な共有が産業成長、投資拡大、雇用創出、外貨不足解消につながる」と評価している。

(山木シルビア、サンティアゴ・ブリニョーレ)

(アルゼンチン)

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