大手非上場企業にも気候変動関連情報開示を義務付けへ、意見公募開始

(シンガポール)

シンガポール発

2023年07月11日

シンガポール政府は2025会計年度(2025年1月~12月)から全上場企業に対し、国際サステナビリティー基準審議会(ISSB)の基準に沿った気候変動関連の情報開示を義務付ける方針だ。また、売上高が10億シンガポール・ドル(約1,050億円、Sドル、1Sドル=約105円)以上の非上場企業に対しても、2027会計年度からISSB基準に基づく気候変動関連の情報開示の義務付けを検討している。会計企業規制庁(ACRA)とシンガポール取引所(SGX)の子会社SGXレギュレーションは7月6日、気候変動関連の情報開示義務案に関する一般からの意見公募を開始した(締切日:同年9月30日)。

同国では、2023会計年度から段階的に、SGXに上場する5つの優先分野の企業に対して、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づく気候変動関連の情報開示を義務付けている(注)。同5分野以外の上場企業については、情報開示義務を順守または、順守しない場合には説明(Comply or Explain)を求めている。

ACRAとSGXが設置した民間企業や学識界代表などで構成する「持続可能性報告諮問委員会(SRAC)」が取りまとめた提言によると、全ての上場企業・発行体(国外で設立の企業や事業信託、不動産投資信託を含む)に対し、2025会計年度から気候変動関連の情報開示を義務付ける。また、売上高が10億Sドル以上の非上場企業に対して、2027会計年度から情報開示を義務付ける。さらに、2027年に情報開示義務を見直した上で、2030会計年度をめどに売上高が1億Sドル以上の非上場企業に対して、情報の開示を求める方針だ。

なお、報告義務への対応の時間的猶予を与えるため、「スコープ3」と呼ばれる取引先など自社のサプライチェーン全体の温室効果ガス(GHG)の排出量の報告については、上場企業・発行体に対して2026会計年度から義務付ける。また、10億Sドル以上の売上高の非上場企業のスコープ3排出量について、2029年会計年度から報告を義務付けるとしている。

さらに、「スコープ1(自社が排出したGHG)」と「スコープ2(他社から供給の電気、熱・蒸気を使用したことに伴う間接排出)」について、ACRA登記のシンガポール認証協会(SAC)が認定する監査、検査、認証会社による保証が必要となる予定だ。上場企業について2027会計年度から、非上場企業については2029会計年度から、報告内容の外部保証を義務付ける予定だ(スケジュールは添付資料表参照)。SRACの今回の提言の詳細は、ACRAのサイトPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)からダウンロードできる。

(注)2023会計年度から、(1)金融、(2)農業、食品、森林、(3)エネルギーの分野の上場企業・発行体について、気候変動関連情報の開示が義務付けられる。また、2024会計年度から、(4)資材、建築、(5)輸送分野の上場企業・発行体に対し、気候変動関連情報開示が義務付けられる予定。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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