米ウイグル強制労働防止法、施行1年で輸入差し止め4,000件超、中国以外からの輸入も対象に

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年07月26日

米国で中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品の輸入を原則禁止するウイグル強制労働防止法(UFLPA)が20226月に施行されてから1年が経過した(注1)。米国税関・国境警備局(CBP)が718日に更新した執行データ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2023年3月17日記事参照)によると、UFLPAに基づいて差し止めなどの対象となった輸入貨物は71日までに4,651件(164,000万ドル相当)だった。そのうち、872件(19%)は輸入が却下された一方、1,849件(40%)は輸入が許可され、残りは保留の状態となっている。

執行件数を産業別にみると、エレクトロニクスが2,156件(137,400万ドル)と最多。次いで、アパレル・履物・織物(812件、3,400万ドル)、工業・製造材料(756件、5,300万ドル)、農産物・調製品(283件、1,700万ドル)などが続く。UFLPAの執行戦略(2022年6月21日記事参照)で優先分野とされたアパレル製品、綿・綿製品、ポリシリコンを含むシリカ製品(太陽光発電製品など)、トマト・トマト製品を含む産業に執行が集中している傾向がみてとれる。他方、工業・製造材料や卑金属の差し止め件数は2023年に入って顕著に増加しており、執行は優先分野以外にも着実に広がっているもようだ(注2)。

執行件数を原産国・地域別にみると、中国が1,708件(2700万ドル)と最多で、ベトナム1,447件(39,700万ドル)、マレーシア1,393件(97,800万ドル)と続く(注3)。輸入金額では、マレーシアが全体の6割を占めて最大だ。産業別にみると、中国はアパレル・履物・織物(464件)が最も多い一方、ベトナムはエレクトロニクス(682件)が約半数を占め、マレーシアもほぼ全てが同産業(1,392件)となっている。

CBPを所管する国土安全保障省(DHS)のロバート・シルバース次官は711日、中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC、注4)の公聴会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで証言し、UFLPAのこれまでの執行実績は「CBPが(UFLPAの執行を担う)任務を真剣に受け止めているという明確なメッセージを輸入業者に送っている」と指摘した。UFLPA戦略の今後の実行に関しては、輸入禁止対象の事業者を掲載した「UFLPAエンティティー・リスト」の拡大にコミットしていると強調した。DHS6月、同リストに新たに中国企業2社とその子会社を加えた(2023年6月12日記事参照)。同次官は「今後数カ月でさらに追加する予定」と説明している。

(注1UFLPAについては、ジェトロ特集ページ「ウイグル強制労働防止法」も参照。同ページでは、UFLPAに関する最新動向を随時紹介している。

(注2)四半期ごと(202279月、1012月、202313月、46月)の執行件数をみると、工業・製造材料はそれぞれ57件、82件、318件、298件、卑金属は5件、24件、25件、95件と推移している。

(注3UFLPAは新疆ウイグル自治区で生産された製品だけでなく、同自治区産の原材料を用いて中国国外で生産された製品にも適用される。そのため、中国以外の国・地域からの輸入についても、執行が及ぶ(2022年8月5日付地域・分析レポート参照)。

(注4)議会上下両院の議員と、大統領が指名した政府高官で構成する委員会。中国の人権と法の支配状況を監視し、大統領と議会に年次報告書を提出する義務を負う(2022年11月21日記事参照)。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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