テックカンファレンス「コリジョン2023」がカナダ・トロントで開催、AIについて議論白熱

(カナダ、日本)

トロント発

2023年07月06日

北米最大級のテックカンファレンス「コリジョン(Collision)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が6月27~29日、カナダ・トロントで開催された。世界118カ国から865人の投資家、1,497社のスタートアップ、1,426人のスピーカーとプレス関係者を含めた3万6,378人が参加した。スタートアップとともに、グーグルやアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)など大手を含むパートナー企業230社もブースを出展した。ジェトロは前回(2022年6月28日記事参照)に続き、日本のスタートアップ8社を支援した。

同カンファレンスは、毎年多くのテーマで講演が行われることで知られており、今回の中心は人工知能(AI)だった。27日に登壇したAWSのアダム・セリプスキー最高経営責任者(CEO)は「顧客は企業向けのセキュリティーとプライバシーを必要としている。ChatGPTの社内使用を禁止した少なくとも10人のフォーチュン500の最高情報責任者(CIO)と話し、彼らはその理由としてセキュリティーが万全でないことを挙げた。AWSは生成AI関連の全ての要素に大量のリソースを投入してきた。また、全てが暗号化されている」と語り、自社サービスの安全性について説明した。

翌28日に「AIはいかに世界を変えるか」のセッションで講演したグーグル・ディープマインドのコリン・マードック最高事業責任者(CBO)は、同社のAIツール「アルファフォールド(AlphaFold)」がタンパク質の構造を特定・予測し、マラリアのワクチン開発を促進していることを挙げ、AIは世界の課題解決に貢献していると主張した。また、AIがユビキタス化(注)する中、その開発は安全で倫理的かつ包括的な方法で行われる必要があるとし、倫理や政治などの幅広い分野の専門家で構成される内外の審査会を設置することで、潜在的なマイナス面を軽減することも重要と述べた。

AIのゴッドファーザーと称されるトロント大学のジェフリー・ヒントン博士は、AIがもたらす弊害として、雇用喪失、戦闘ロボット、存亡の危機などを挙げた。また「AIがわれわれより賢くなる可能性を真剣に考慮しなければならない。彼らが支配権を握るという目標を持つようになるかもしれない」と警鐘を鳴らした。ヒントン博士はグーグルでAI開発に従事していたが、同社への影響を考慮せずにAIの危険性について話せるよう、同社を退職したことを20235月初めに明らかにしている。

(注)いつでも、どこでも利用できる状態のこと。

(飯田洋子)

(カナダ、日本)

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