2023年世界平和度指数、ブータンが17位で南アジア地域では最上位
(アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、ネパール、パキスタン、スリランカ)
調査部アジア大洋州課
2023年07月14日
オーストラリア・シドニーを拠点とするシンクタンク、経済平和研究所(Institute of Economics and Peace:IEP)は6月28日、「世界平和度指数2023年版(Global Peace Index 2023:GPI、注1)」を発表した。同報告書では、世界の平和度が9年連続で悪化しており、世界各地でみられる紛争も、過去15年間で最多となったことを明らかにした。
163カ国・地域中、アイスランドは2008年の調査開始以来15年連続で、世界で最も平和な国であり続けている。次点にはデンマーク、3位にはアイルランドが続いた。なお、日本は前年と変わらず9位を維持した。
南アジア地域(注2)で最も平和な国はブータンで、「軍事化」の項目で3ポイント弱悪化したものの、依然として世界で最も軍事化されていない国の1つであり、17位(前年:19位)と順位を上げた。同地域の各国の順位およびポイントは、次のとおり。
- 南アジア地域は、平和度がわずかに悪化し、世界全体では2番目に平和度の低い地域だった。
- アフガニスタンは163位と、過去6年連続で、世界で最も平和度が低い国とされた。テロの影響指標は4年連続で改善しているものの、引き続き同国のテロが深刻な安全保障上の懸念であることが示された(アフガニスタン情勢に係る各国・地域の見方参照)。
- 126位(135位)のインドは、同国の暴力犯罪、近隣諸国との関係、政情不安の改善により、全体的な平和度は前年より3.5ポイント改善した。近隣諸国との関係指標の改善は、2022年にパキスタンや中国との国境を越えた暴力や停戦違反が減少したことによる。さらに、国境での事件の減少による中国との地政学的緊張の緩和、より一般的な社会不安の減少が政治的不安定性指標の改善につながった。他方、同国の軍事費は400億ドルに達し、中国(1,800億ドル)、米国(700億ドル)と並んで、軍事費の増加が最も大きい上位3カ国にも名を連ねた。
- パキスタンは、同国の平和と安定が改善されたという声はあったものの、146位(147位)で、ほぼ前年と同じ順位だった。
- その他の南アジアの国では、バングラデシュが88位(96位)、ネパール79位(73位)、スリランカが107位(90位)にそれぞれランクインした。
(注1)GPIは、23の質的・量的指標を用い、現在進行中の国内・国際紛争の程度、社会の安全と治安のレベル、軍事化の度合い、といった3つの領域にわたり、各国の平和の度合いを測定している。
(注2)IEPの定義する南アジア地域は、アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、ネパール、パキスタン、スリランカを指す。
(寺島かほる)
(アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、ネパール、パキスタン、スリランカ)
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