UPSとチームスターズの労使交渉、米小売業リーダー協会が早期合意を要請

(米国)

ニューヨーク発

2023年07月25日

米国小売業リーダー協会(RILA)は7月19日、物流大手UPSと同社を代表する労働組合のチームスターズの労使交渉について、ストライキ回避に向けた早期解決を両者に要請外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

UPSとチームスターズは過去数週間にわたって協議を重ねているが、主な対立点は、組合員の約半数を占めるパートタイム労働者の賃上げだ。労働市場の逼迫に伴って新規採用者の賃金が跳ね上がり、在職期間の長いパートタイム労働者は新規採用者の賃金とほとんど変わらないことに不満を抱いている(ロイター7月14日)。これを踏まえ、UPSは7月19日、労働者の給与と手当を引き上げる準備を整えており、7月最終週には交渉の場に戻って速やかに公平な合意に達するよう取り組むと発表した。しかし、賃金引き上げは労働組合のないライバル企業に対して人件費の面で不利にもなるため、交渉はなお予断を許さない状況だ。

現行の労働契約が失効する7月31日までに新たな契約が結ばれなければ、約33万人規模のストライキが発生する可能性がある(2023年7月14日記事参照)。米国内の宅配業務の約4分の1を扱う同社が機能不全に陥った場合、アマゾンなどのオンライン小売業者の配送に加え、医師や病院向けの高額な処方箋薬や、そのほか何百万もの企業の在庫の配送などに影響が出る可能性があるという(ロイター7月19日)。

RILAは今回の要請で「小売業者は緊急事態に備えた計画を準備しているが、たとえ最も強固な計画を立てたとしても、新学期や年末商戦に本格的に向かう中、サプライチェーンの重要な構成要素が停止することの影響から、小売業者や消費者を守ることはできない」と強い懸念を示している。なお、米コンサルティング会社アンダーソンエコノミックグループ(AEG)は、10日間のストライキが引き起こす米国経済への損失は70億ドル以上と推計している。

(樫葉さくら)

(米国)

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