米主要港、5月の小売業者向け輸入コンテナ量は前月比8.5%増も労使交渉の先行きに懸念

(米国、カナダ)

ニューヨーク発

2023年07月14日

全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社のハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(7月7日)によると、2023年5月の米国小売業者向けの主要輸入港(注)の輸入コンテナ量は前月比8.5%増の193万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算、添付資料図参照)となった。NRFによると、国内の主要港の輸入コンテナ量は8月に2023年のピークを迎え、203万TEUになると推定されている。

グローバル・ポート・トラッカーの見通しでは、2023年6月の輸入コンテナ量は前年同月比17.5%減の186万TEU、7月は11.0%減の194万TEUと減少傾向が続く一方、8月は10.1%減となるも203万TEUに達し、2022年10月以来初めて200万TEUまで回復すると推定されている。なお、2023年初からの9カ月間でみると、前年同期比17.6%減の1,650万TEUにとどまる見込みだ。

発表の中で、ハケット・アソシエイツの創設者ベン・ハケット氏は、主要港の取扱量が増加している背景について、「第1四半期のGDP成長率が2%に上方修正され、消費者の需要は安定している。小売業者や卸売業者が在庫を減らす一方で、消費意欲は依然として旺盛だ」と指摘した。また、同氏は「これらの数字を総合すると、経済成長はもう1四半期続き、景気後退の可能性が低くなっていることが確認できる」と述べた。

ただし、米国やカナダでは労使交渉が過熱しており、サプライチェーンが混乱に陥る懸念が高まっている。カナダでは7月1日、同国の重要な玄関口であるバンクーバー港とプリンス・ルパート港の労働者約7,500人が賃上げを求めてストライキを起こした。これにより、1日当たり3億7,700万ドルの損失が生じているという。ブリティッシュ・コロンビア州海事雇用者協会(BCMEA)によると、連邦政府の仲介支援を受け、港湾労働者と雇用主が交渉を再開し、現在も協議を継続している(ロイター7月9日)。また、物流大手UPSと同社を代表する労働組合のチームスターズは、数週間にわたって労使交渉を行ったが、給与や生活費の引き上げを巡る問題で合意できなかった。現行の労働契約が失効する7月31日までに新たな契約が結ばれない場合、約33万人の労働者がストライキを起こす可能性があるという(ブルームバーグ7月5日)。

こうした状況で、NRFのサプライチェーン・税関担当バイスプレジデントのジョナサン・ゴールド氏は「バンクーバーとプリンス・ルパートに影響を及ぼす港湾ストライキは、米国には大きな影響を与えないはずだが、カナダ経由で商品を輸入する米国の小売業者の一部に影響を与え、ほかの港にも波及する可能性がある」と述べている。また、UPSとチームスターズの労使交渉については、「7月末の契約期限までに対立が解消されなければ、米国の港から店舗への商品輸送能力に影響を及ぼす可能性がある」との懸念を示している。

(注)主要輸入港は、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトルおよびタコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミおよびジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港を指す。

(樫葉さくら)

(米国、カナダ)

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