英政府、EUとの金融サービス規制協力について覚書締結

(英国、EU)

ロンドン発

2023年07月03日

英国政府は6月27日、英EU間の金融サービスに関する規制協力について、欧州委員会と覚書を締結PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。今回の覚書は、2020年12月に発表された英EUの共同宣言で、2021年3月までに合意するとしていたが(2021年4月1日記事参照)、北アイルランドを巡る問題から進展がなかったとされている。今後は覚書に基づき、英国とEUは少なくとも年に2回、金融サービス規制について議論する「英・EU共同金融規制フォーラム」を実施する。初回は2023年秋を予定。

同フォーラムは規制協力を促進する場として、透明性の向上、不確実性の削減、国境を越えた規制実施にかかる課題の特定、基準の互換性に向けた取り組み検討などを目的としている。主な活動は次のとおり。

  • 英国とEUの規制の特質を踏まえた、金融サービス分野に関する国際規制の域内でのタイムリーな実施促進
  • 規制変更に関する情報共有を通じた、国境を越えた規制実施にかかる潜在的な問題の特定
  • 同等性(注1)などの制度に関する政策、規制、手続きに関する意見交換
  • 同等性の採択、停止、撤回の決定に関する対話
  • 一方で提案された措置が一方の金融サービス部門に多大な影響を与える、または金融市場の接続性に影響を与える可能性がある場合、リスク分析や潜在的な経済的影響に関する意見交換
  • マクロプルーデンス(注2)に関する状況や金融安定リスクに関する議論
  • 国際基準を運用するための規制を効果的に監督し執行する手段に関する継続的な情報提供
  • マネーロンダリングやテロリストへの資金提供の防止と対応に向けた取り組みに関する継続的な情報提供

一方で、欧州委員会の広報担当者は、今回の覚書締結が英国によるEU市場へのアクセスを回復するものでも、同等性評価の採択を前もって決定するものでもないとコメント(「BBCニュース」6月27日)。

また、欧州委は2022年12月、一部のデリバティブ取引について、EUの中央清算機関(CCP、注3)を利用することを市場関係者に求める法案を提出している。欧州委はこれまでも、EUの金融市場が少数の英国のCCPに過度に依存しているとして、安定性に懸念を示していた。

(注1)EUの監督機関が域外国の規制に対する評価を行い、 EUと「同等」と認めた場合に限り、第三国からの市場アクセスを認める仕組み。

(注2)日本銀行によると、金融システム全体のリスクの状況を分析・評価し、それに基づいて制度設計・政策対応を図り、金融システム全体の安定を確保する政策。

(注3)清算業務に従事する金融機関間の取引に伴って発生する債権・債務を引き受け、履行する機関。

(松丸晴香)

(英国、EU)

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