バイデン米政権、約120のロシア関連の個人・事業体を制裁対象に追加

(米国、ロシア、ウクライナ)

ニューヨーク発

2023年07月24日

米国国務省と財務省は7月20日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに関係する120近い個人・事業体を金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定した。

アントニー・ブリンケン国務長官は今回の制裁の趣旨についてプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「ロシアによる重要資材へのアクセスを制限し、その将来的なエネルギー生産と輸出能力を制限し、国際金融システムの利用を遮断し、制裁の回避や迂回(うかい)に加担しようとする者を取り締まる」と説明している。重要資材へのアクセス制限については、財務省と商務省が5月に、ロシアの武器システムに利用される恐れが高い品目を特定していた(2023年5月22日記事参照)。財務省はプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、SDNに今回指定した個人・事業体の多くがこれらの品目を在ロシアのエンドユーザーに引き渡していたとしている。財務省はこのほか、ロシアに拠点のある防衛関連企業・研究機関、金属・鉱業、石油・ガス関連企業などをSDNに指定した。また、金融分野では、ロシアのオンライン銀行大手のティンコフ銀行を含む5つの銀行を指定している。

国務省も同じ7月20日、自らの権限でSDNに指定した対象をファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公表した。国営原子力企業ロスアトムの子会社や、海運会社のサハリン海洋汽船(SASCO)など、ロシアのエネルギー関連のプロジェクトに関わる企業や、民間軍事会社などを指定している。また、個人では既にSDNに指定済みの民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏と関わりのある人物2人や、副大臣級のロシア政府高官数人を指定した。SDNに指定した個人・事業体は、在米資産の凍結や、米国人(注1)との資金・物品・サービスの取引禁止が科される(注2)。バイデン政権で対ロ制裁を統括するワリー・アデエモ財務副長官は「ロシアがウクライナに対するいわれのない残酷な戦争を続ける限り、われわれはロシアが必要とする技術を取り上げるとともに、ロシアの軍事産業の供給力を攪乱(かくらん)するための制裁を科していく」との声明を出している。

バイデン政権の対ロシア・ベラルーシ制裁については添付資料参照。

(注1)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。

(注2)SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。SDN指定を今回受けた企業などの詳細は財務省のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。ウクライナ情勢に関する財務省による制裁の全容は同省の「ロシア関連制裁」のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。制裁対象に指定した個人・企業などについては、同省外国資産管理局(OFAC)のデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでCountry欄のRussiaを選択し、Searchをクリックすることで確認可能。

(磯部真一)

(米国、ロシア、ウクライナ)

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