欧州委の研究機関、ELV指令などの見直しに向けた影響分析を発表

(EU)

ブリュッセル発

2023年07月26日

欧州委員会の共同研究センター(JRC)は713日、欧州委が自動車設計・廃車(End-of-Life VehiclesELV)管理で持続可能性要件に関する規則案を発表(2023年7月20日記事参照)したことを受け、法案作成の一助となった報告書2本をプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。報告書は「新型乗用車・小型商用車(バン)生産での再生プラスチック利用目標設定に向けて、ELV指令の見直しに伴う技術提案と影響分析外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(712日付)と「乗用車に使用される重要原材料などの循環性を改善する措置外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(526日付)で、欧州委出版局のウェブサイト上で公開されている。

報告書によると、EU域内の新車生産には、EUのプラスチック需要の約10%、銅需要の約9%が使用され、自動車産業全体では60種類以上の原材料に由来する材料が使用されている。一方、ELVから回収されるプラスチックのリサイクル率はわずか19%にとどまっている。さらに、電動モーターの中のレアアースや、電子機器に組み込まれているパラジウムなどの重要原材料(CRM)は車体の破砕後に回収されていない。今後、電気自動車(EV)へ移行するにつれて、これらの原材料の需要はさらに高まることが見込まれる。例えば、電動モーターに使用される希土類永久磁石(REPM)のネオジムとジスプロシウムに対する需要は2050年までにそれぞれ4,025トンと620トンになると予測され、2020年比でそれぞれ10倍、7倍に増加する。

同規則案は、プラスチックおよび自動車のバリューチェーンの改善、ELVからのパラジウムや銅、レアアースの再利用を促進する機会につながる可能性がある。一方、報告書は再生プラスチック市場の開発が課題だと指摘する。現在、ELVからプラスチックの分別とリサイクルを効率的に実施する施設は、EU全体で10%に満たない。欧州委は再生プラスチックの市場強化を狙い、3.5トン未満の新車と小型商用車への再生プラスチックの利用目標の設定を提案した。自動車産業がより野心的なリサイクル方法を開発することを後押し、2030年には石油の使用量を最大400万バレル削減できると見込む。

ELVに含まれる重要原材料やその他の材料については、ELV回収を増やし、部品や材料の分別を進め、最終的にリサイクルを可能にすることが課題だ。欧州委は報告書を基に、設計段階と廃車段階の両方をカバーする4つの義務を提案した。(1EVは電動モーターを取り外し、修理、再利用できるように設計する。(2)メーカーはリサイクル事業者に自動車に使用している重要原材料を告知し、重要原材料を使用している部品をラベル表示する。(3EVを破砕する前に電動モーターを取り外す。(4)自動車を破砕する前に、特定の電子部品〔車載インフォテインメントシステム(注)やインバーターなど〕を取り外す。これらの措置により、2035年には最大350トン、2040年には最大1,400トンのレアアースの回収が可能となり、2040年に予想される電動モーター用のレアアース需要の約1213%を満たすという。

(注)カーナビゲーションシステムなどのインフォメーション(情報)とカーオーディオなどのエンターテインメント(娯楽)の各機能を統合し、シームレスに切り替えて運用できるシステム。

(大中登紀子)

(EU)

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