2022年の欧州製紙生産、包装用含め大幅減少

(EU)

ブリュッセル発

2023年07月12日

欧州製紙連合会(CEPI)は7月4日、2022年の欧州の紙・板紙の消費量は7,250万5,000トンで、前年比3.5%減だったと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。エネルギー価格や原材料価格が上昇してユーロ圏が景気後退に入り、特に同年末にかけて予測以上に消費量が落ちた。生産量は8,502万4,000トンで前年比6.1%減となり、新型コロナウイルス危機の影響を受けた2020年(前年比4.7%減)を上回る減少率となった。記録的なエネルギー価格の高騰を受け、特に下半期に事業者が一時的な生産停止に踏み切ったことが影響した。

用途別では、近年、包装材用の紙・板紙が化石燃料由来の包装材に代わるものとして、製紙部門の成長の原動力となってきた。しかし、2022年は包装材用の生産量が前年比4.6%減を記録。原材料別では古紙利用量も6.4%減と縮小した。

紙・板紙の貿易量については、輸出1,756万3,000トン、輸入504万4,000トンと、引き続き輸出超過となったが、輸出量は前年比12.8%減だった。CEPIは、EU域内の消費量と輸出量がともに減少したのは生産量の急激な減少を反映するもので、欧州製紙部門の競争力が低下している可能性があると分析した。

欧州産業界はEUの2050年までの気候中立実現に向け、脱炭素化や循環型経済への移行を進めているが、包装・包装廃棄物規則案(2022年12月2日記事参照、注)など新たな法案の発表が続き、企業の負担増に反発する声も出ている(2023年6月7日記事参照)。製紙部門もグリーン化に向け、2022年は約50億ユーロと、業界規模に対し比較的大規模な投資を行ったが、CEPIはEUの気候変動目標達成への貢献には今後数年間でより一層の投資が必要になると指摘した。CEPIのヨリ・リングマン事務局長は「事業者のコスト負担は増加している一方で、新たな規制の予測が難しくなっている。バイオエコノミー社会の実現に向け、手頃な価格帯で汎用性が高いソリューションの提案を続けていく」と述べた。

(注)ジェトロの調査レポート「EUの循環型経済政策(第2回)包装・包装廃棄物規則案を中心とする2022年政策パッケージ第2弾」(2023年3月)も参照。

(滝澤祥子)

(EU)

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