5月下旬~6月の経済活動にほぼ変化ないが、景気冷え込む兆候、米シカゴ連銀ベージュブック

(米国)

シカゴ発

2023年07月14日

米国連邦準備制度理事会(FRB)が7月12日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、注1)の中で、米国中西部の一部地域(注2)を管轄するシカゴ連銀は、5月下旬から6月にかけての同地域の経済活動について、前回の調査期間(2023年6月5日記事参照)からほぼ変化がなかった(little changed)と報告した。関係者は総じて今後1年間の需要鈍化を予想しており、景気後退の可能性について懸念していると報告した。

同地域の経済活動を分野ごとにみると、雇用は緩やかに(moderately)増加した。関係者は今後1年間も同様の伸びを予想している。多くの企業が高技能職の労働者の獲得に苦労している一方で、「労働者の採用が容易になった」または「人員が十分に確保できた」という報告も多いとした。また、最近の労働組合との契約で、賃金が3〜5%上昇したという指摘もあった。

個人消費は報告期間中、ほぼ変化がなかった(little changed)。自動車以外の小売売上高は全体的に横ばいで、消費者は引き続き品質や利便性で妥協し低価格を求める傾向にあるという。ライトビークル(乗用車・小型トラック)の販売台数は横ばいだったが、2023年初の予想を上回る水準となった。

企業支出はわずかに(slightly)減少した。複数の関係者が新しい設備やソフトウエアの購入を報告したが、企業の設備投資は横ばいだった。輸送需要は減少し、産業用、商業用、家庭用のエネルギー需要はわずかに増加した。

製造業の需要は控えめに(modestly)減少した。受注残は緩やかに(moderately)減少し、鉄鋼の受注は自動車や建設業界の堅調な需要に支えられ、わずかに増加した。

2023年の同地区での農業所得の見込みについては、干ばつが拡大したことでやや悪化した。作物の生育は例年より遅れ、価格は報告期間中、不安定だった。トウモロコシの価格は下落したが、大豆の価格は上昇し、小麦の価格はほぼ同じだった。

地域社会の状況について、地域開発団体と行政機関は、経済活動にほとんど変化はない(little change)とするものの、景気が冷え込んでいる兆候があると報告した。州政府関係者は、税収の伸びが鈍化し、失業保険の需要がわずかに増加したことを確認しているという。

個々の調査対象項目ごとのポイントは、添付資料表参照。

(注1)連邦公開市場委員会(FOMC)の開催に先立って、年8回公表されており、銀行からの報告や、ビジネス関係者などの声を基にまとめたもの。

(注2)アイオワ、イリノイ北部、インディアナ北部、ウィスコンシン南部、ミシガン南部。

(星野香織)

(米国)

ビジネス短信 18e29557456c87ba