EUデジタル化、新型コロナ禍で前進もインフラアクセスが課題

(EU)

ブリュッセル発

2023年06月07日

欧州投資銀行(EIB)は525日、欧州のデジタル化の進捗と課題を報告する「EUにおけるデジタル化2022-2023年」を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。調査は、加盟国の企業とベンチマークとなる米国の企業約12,800社を対象に毎年実施。新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染症の感染拡大を契機に、2022年はEU企業の半数以上(53%)がオンラインでのサービス提供などデジタル化に力を入れたことが分かった。

デジタル化の中でも、2022年はEU企業の69%が高度なロボット工学やビッグデータ分析、人工知能(AI)などの先進的なデジタル技術を導入した。米国で同様の取り組みを行っている企業の割合(71%)との差は2ポイントに縮まった。2019年は11ポイント差だった。

一方、EUは中小企業のデジタル化の遅れが目立つ。米国企業は新型コロナへの対応策として企業規模にかかわらずデジタル化が進んだが、EUでは大企業62%、中小企業30%と差があった。デジタル化への投資が進まない要因として、EU企業の14%がインターネットのアクセスや速度といったデジタルインフラを挙げた。また、デジタルスキルを持つ労働者の存在も、デジタル化を大きく左右する。労働者が平均以上のデジタルスキルを持つ地域は、高度なデジタル技術を導入する傾向があり、これらの地域の企業は新型コロナ危機でデジタル化への投資が拡大した。

ユーロスタット(EU統計局)によれば2022年、EU加盟国のうち、情報通信技術(ICT)の専門家が雇用者に占める割合はスウェーデン(8.6%)で最も高く、ルクセンブルク(7.7%)、フィンランド(7.6%)と続いた。他方、最も低かったのはギリシャ(2.5%)で、ルーマニア(2.8%)、ポーランド(3.6%)となった。

貿易はデジタル化に重要な役割を果たしていることも明らかとなった。国際貿易に関わる企業は、高度なデジタル技術をより頻繁に採用する傾向にあり、障害が生じた際の対応が早く、かつ積極的に対処している。また、デジタル化を進めている企業は気候変動対策への投資意欲も旺盛で、57%が気候変動対策に投資しているのに対し、デジタル化に着手していない企業は43%にとどまっている。

(大中登紀子)

(EU)

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