EV税額控除規則案へのパブコメ募集に主要団体・企業が意見提出

(米国)

ニューヨーク発

2023年06月27日

米国財務省と内国歳入庁(IRS)は6月16日、インフレ削減法でクリーンビークル(注1)の購入者に提供する税額控除(内国歳入法30D条)の細則を記した規則案(2023年4月3日記事参照)に対するパブリックコメントの募集を締め切った。6月23日時点で87件のコメントが公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされている。

提出されたコメントの多くは、税額控除の対象となるために必要な、車両に搭載されるバッテリーの調達価格要件に関するもの。バッテリーの原材料となる重要鉱物や部品の調達価格の算出方法、2024年以降調達先の対象から除外される「懸念される外国の事業体」などに関する詳細を明らかにすべきとして、具体的な代替案などを提示した。さらに、重要鉱物の調達先として認められる自由貿易協定(FTA)の定義が拡大したことに関するコメントも寄せられた。

バッテリーに関する調達価格の算出方法については、パナソニックが規則案を簡便化するよう要請した。算出基準となる「付加価値」の発生地点を特定する際、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)で採用している関税分類変更基準(CTC、注2)に基づくことを提案した。一方、自動車産業のロビー団体のオート・ドライブ・アメリカはより詳細な計算方法を含む複数のシナリオを提示した。ゼネラルモーターズ(GM)はバッテリーの重要鉱物抽出と処理工程の境界線に関して、規則案に定められている加工のプロセス(注3)を基準とせず、輸送可能な形状または純度レベルを採用すべきと提案している。

FTAの解釈に関しては、民主党のジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州)が「2つ以上の国の間で結ばれた締約国の『実質的に全ての品目』に対して、関税やそのほかの制限を撤廃する協定」であり、「日本はFTA締結国ではない」と指摘し、財務省に「法を逸脱した規則を加えるべきではない」とコメントした。テスラは調達先の選択肢を広げるため、新たなFTAが合意された場合、協定の発効を待たずに速やかに対象国として認定するよう求めた。

「懸念される外国の事業体」に関しては、対象となる事業体リスト(エンティティ・リスト)の提示など、複数の企業、団体が詳細の公表を訴えている。そのほか、米国自動車イノベーション協会(AAI)と全米自動車ディーラー協会(NADA)は税額控除の発生時期について、車両の使用開始年(注4)ではなく、生産者が要件の適合を証明した年とすることを共同提案した。バッテリー関連の調達価格要件は年を経るごとに厳しくなる。生産年に要件を満たした車両が翌年以降に販売され、税額控除の対象外となる場合が想定されている。

(注1)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。

(注2)加工後の輸出製品の関税分類(HSコード)が同製品を生産するために使用した非原産部材のHSコードと異なる場合、原産性を付与するに値する「実質的変更」が行われたと判断する。

(注3)規則案では、抽出には物理的プロセス、処理には化学的と熱的プロセスが含まれると定義されている。

(注4)規則案では「納税者が車両を所有した日」と定義されている。

(大原典子)

(米国)

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