大成工業、ウッタル・プラデシュ州に自己完結型の汚水処理施設を設置

(インド、日本)

ニューデリー発

2023年06月29日

大成工業(本社:鳥取県米子市)は6月21日、インド北部ウッタル・プラデシュ(UP)州のムザファルナガルにおいて、自社技術を使った汚水処理施設の引き渡し式を兼ねたセミナーを行った。式典には、UP州のカピル・アガルワル職業訓練・技能開発相、ムザファルナガルのアルビンド・バンガリ地区長官、ムザファルナガル地方議会のミナクシ・スワループ議長らが出席した。汚水処理施設の設置先となった、専門学校シュリー・ラーム・グループ・オブ・カレッジズ(SRGC)の創業者であるS・C・クルシュレシュタ校長は、インド国内で適切な汚水処理がなされているのは全体の3割程度である点や、国内の水質汚濁の原因の75~80%は汚水の垂れ流しと考えられる点に言及し、社会課題の解決につなる日本技術が今後、UP州内外で普及していくことに期待すると述べた。

大成工業が今回設置したのは、肥だめとなる消化槽と、浸潤散水処理資材を用いる土壌処理装置に、貯留槽を組み合わせた自己完結型の汚水処理施設だ(添付資料図参照)。同施設は電気を必要とせず、下水道がない場所にも設置が可能であることから、日本国内では自然公園など500カ所以上に既に設置されている。海外では、2013~2015年度の環境省によるアジア水環境改善モデル事業の一環で、ソロモン諸島に同様の施設を2カ所設置しており、インドは2カ国目の事例となった。

大成工業は2016年6月、国際協力機構(JICA)の案件化調査(中小企業支援型)を通じてインドでの調査を始め、2018年6月以降はJICAの普及・実証・ビジネス化事業(中小企業支援型)としてUP州での実証に取り組んできた。この一環で、バラナシではガンジス川流域に公衆トイレを設置し、ムザファルナガルではSRGCの学生寮の生活排水160人分を処理できる施設をそれぞれ建設した。

大成工業の三原博之代表取締役によると、実証を通じて、雨季における大量の雨水が施設に流れ込まないような工夫は必要なものの、両都市の高温の気候が施設機能上プラスに働いていると考えられることが確認できたという(ヒアリング日:2023年6月21日)。また、今回の事業をきっかけとして、インド企業からも同社の汚水処理技術に対する引き合いが寄せられ始めている。大成工業は2022年7月、事業提携先である社会的企業TARAの学習施設内にショーケースプラントを設置しており、今後のインド国内での本格展開の可能性を探りたいとしている。

写真 ムザファルナガルにおける式典の様子(ジェトロ撮影)

ムザファルナガルにおける式典の様子(ジェトロ撮影)

(広木拓)

(インド、日本)

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