シーメンスが投資戦略発表、多角化と現地生産・現地販売体制を推進

(ドイツ、中国、シンガポール)

ミュンヘン発

2023年06月29日

ドイツの電機大手シーメンスは6月15日、デジタル化、自動化、サステナビリティを主導するハイテク工場やイノベーション施設などに総額20億ユーロを投資していく投資戦略を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同社のローランド・ブッシュ代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)は、シンガポールで行った記者会見で、今回の20億ユーロの投資について、将来にわたる成長を加速させ、イノベーションを促進し、自社の強靭(きょうじん)性を高めるためだとし、特に、自社事業の多角化と現地生産・現地販売体制を支えると強調した。

シーメンスは今回の投資戦略の中で、シンガポールにハイテク工場を新設する。投資額は約2億ユーロで、400人以上の新規雇用が創出される見込み。フランクフルター・アルゲマイネ紙(6月16日)によると、同工場は、ドイツ・バイエルン州のアンベルク工場、中国の成都工場と並ぶ、機械・設備向けの制御技術関連の工場となる。ブッシュ社長によると、同工場から、インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイなどの急拡大する東南アジア市場やインドに製品を供給するという。

一方で、シーメンスは、急成長する中国事業をチャンスとして捉えるとしている。具体的には、成都工場の拡張に1億4,000万ユーロを投資し、新たに400人分の雇用が創出される見込み。また、広東省深セン市にデジタル研究開発(R&D)イノベーションセンターを新設する。すでに、シーメンスの医療機器会社シーメンスヘルスケアは2023年5月、深セン市と既存拠点の生産拡大で戦略的協力枠組み協定を締結(2023年5月29日記事参照)、6月には、上海市浦東新区にある診断用医薬品の生産・開発拠点を本格稼働している(2023年6月14日記事参照)。

在中国ドイツ商工会議所(中国ドイツ商会)が6月に発表したアンケート調査では、現在の地政学的緊張の高まりを踏まえて、現地化の強化または多様化の促進という2つの方向性で各社が対応していることが明らかになった(2023年6月21日記事参照)。今回のシーメンスの動きは、この具体例といえる。

シーメンスの売上高(2022年)は719億7,700万ユーロ。売上高を国・地域別にみると、欧州・アフリカ・中東が46.5%(うちドイツ16.6%)、米州が28.7%(うち米国24.0%)、アジア・オーストラリアが24.8%(うち中国13.3%)。産業部門別では、シーメンスヘルスケアが30.2%、デジタル産業が27.1%、スマート・インフラストラクチャーが24.1%、モビリティが13.5%、などとなっている。

(高塚一)

(ドイツ、中国、シンガポール)

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