スマートフォンの輸出伸長するも部材の輸入依存に課題

(インド)

ベンガルール発

2023年06月01日

インド南部では、iPhoneを中心にスマートフォンの生産が拡大しており、近年、ベンガルール国際空港から米国、欧州、日本などへの輸出が増加傾向にある(2023年5月12日記事参照)。

2022年の携帯電話・その他の機器(HSコード:8517)の輸出額は、18億8,400万ドルに上ったが、うちスマートフォンが11億4,200万ドルで、輸出総額の17%を占めた(添付資料表1参照)。

一方、スマートフォンの輸出が伸長するに従い、関連部材の輸入も大きく増加しており、同年の携帯電話・その他の機器の輸入額は22億2,600万ドルに上った。うち、完成品であるスマートフォンは8,600万ドルにすぎないため、その多くが組み立てに必要な部材関連の輸入と推測される。表には示さないが、その大半が中国からの輸入となっており、南インドにおけるスマートフォン生産は中国製の部材に大きく依存している様子が読み取れる。

インドが長年抱える貿易赤字構造については、ベンガルール国際空港の輸出入の推移を見ても明らかで、2022年は輸出67億1,100万ドルに対し、輸入113億7,400万ドルと、46億6,300万ドルの入超だった(添付資料表2参照)。

今後、南インドでのスマートフォンの生産は、台湾の電子機器受託製造(EMS)大手を中心に拡大していく見込みだが、生産に必要な部材を中国からの輸入に頼る構造は当面続くものとみられる。インド政府が推進する製造業振興政策の生産連動型インセンティブ(PLI)は、多くの主要部材を海外からの輸入に頼る現状から脱却し、国内競争力を強化する目的で2020年に導入された。PLIには現在、多くの外国企業が申請し承認を受けているが、今後、特に電子部品や半導体などの分野においても、自州の競争力を強化したい国内各州により、外資に対する投資誘致合戦が繰り広げられることが予想される。

(水谷俊博)

(インド)

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