国連機関IOM、在タイ日系企業に移住労働者雇用ガイドラインを周知

(タイ、ASEAN)

バンコク発

2023年06月09日

国連関係機関の国際移住機関(IOM)タイ事務所は、移住労働者を雇用する事業者向けガイドライン(日本語版)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますについて、在タイ日系企業に向けた周知を5月下旬から本格化させている。ジェトロは6月7日、同事務所に同ガイドラインの概要にかかるヒアリングを行った。

近年、タイでは労働力の逼迫から、カンボジア、ラオス、ミャンマーなどからの外国人労働者を雇用する日系企業が少なくない。IOMタイ事務所の船川夏子プログラム・コーディネーターによれば、「新型コロナウイルス感染拡大後のタイ・ASEANでは、経済活動の復調とともに労働者需要と人の移動が右肩上がりだ。労働人口に占める外国人労働者の割合が各国で高まっており、タイでは1割を超える」と指摘する。

欧州を中心に、輸出先でビジネスと人権関連の法規制が強まるなか、取引先から情報開示が義務付けられ、順守しない場合は取引停止リスクが発生するなど、サプライチェーンの人権リスクマネジメントが不可避となりつつある。一方、在タイ日系企業からは「具体的に何から着手してよいか分からない」という声も聞かれる。IOMのガイドラインは、そうした企業の経営者や経営企画部、移住労働者の雇用にかかわる人事部、サプライヤーの調達プロセスにかかわる実務者などを主な対象としている。

同ガイドラインは初心者向けの手引書でありながら、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)などの国際スタンダードに沿いつつ、日系大手商社での勤務経験がある船川コーディネーターから見ても、企業担当者が実務レベルで十分に利用できるものだという。内容としては、企業が移住労働者の権利を尊重しつつ、事業を展開するためのステップが解説されているほか、下記のような「企業がそのまま使える」(船川氏)チェックリストが付属されている。

  • 要約「移住労働者が労働移動のすべての段階において経験する共通の課題およびリスク」
  • 「人材紹介業者との業務委託契約」チェックリスト
  • 「採用・斡旋(あっせん)手数料および関連費用」ガイダンス・ノート
  • 「雇用契約」チェックリスト
  • 「移住労働者の宿舎」チェックリスト

IOMでは今後、同ガイドラインの内容を分かりやすく解説した無料オンライン講座外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの日本語版の開講、「公正で倫理的な雇用のためのデューデリジェンス・ツールキット外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(日本語版)の発表も予定している。

また、IOMは、企業ニーズに応じた生産拠点やサプライヤーにおけるデューデリジェンス調査の実施、従業員やサプライヤー向けの研修、各種アドバイザリーなどのサポートも提供しており、企業から好評を得ている外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますという。著名な企業ではファーストリテイリング外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますイケア外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますアディダス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどの活用実績がある。

(北見創)

(タイ、ASEAN)

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