英政府、法定最低賃金違反の企業リスト公表、追加アドバイスも発表
(英国)
ロンドン発
2023年06月30日
英国政府は6月21日、一部従業員に法定最低賃金を支払っていなかったとされる202社のリストを公表した。リストは歳入関税庁(HMRC)が2017年から2019年に実施した調査に基づくもので、いずれの企業も従業員への支払いは完了しており、罰則も受けたとされている。
政府によれば、リストに挙げられた企業が最低賃金を下回った原因としては、39%が従業員の賃金からの控除、39%が労働時間に対する賃金の不正確な支払い、21%が職業実習生への支払額の誤りとなっている。
リストに挙げられた企業は大手から中小企業、個人事業主まで幅広いが、未払い賃金が最も多かった小売業のWHスミスは、1万7,607人の従業員に対して総額約100万ポンド(約1億8,300万円、1ポンド=約183円)が未払いだったとされている。同社の広報担当者はメディアに対し、従業員の制服に関する規程への法定賃金規則の適用方法を誤解していたことが原因で、全ての従業員への払い戻しが行われたとコメントしている。
雇用主向けに新たなアドバイスを公表
政府は同日、雇用主向けに、従業員に対して正しく賃金を支払うために取るべき措置に関する追加のアドバイスを公表した。その中で政府は、法定最低賃金以上の金額を労働者に支払っていても、控除などにより下回ってしまう可能性があるとした。さらに一般的な間違いとして、チップは賃金に含まれないことや、移動を伴う業務の場合の移動時間分の賃金も支払う必要があることなど、7つの項目について説明している。このほか、アドバイスや支援を受けることができるAcasヘルプライン
も設置している。
なお、英国の23歳以上向けの法定最低賃金は、2023年4月から1時間当たり10.42ポンドに引き上げられている。
(内山きらり、山田恭之)
(英国)
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