持続可能な投資促進に向け、マレーシアSDG投資家マップを発表

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年06月20日

マレーシア投資貿易産業省(MITI)は6月19日、国連開発計画(UNDP)と共同で開発した投資家向け情報提供ツール「マレーシアSDG投資家マップ」を発表した。持続可能な開発目標(SDGs)に基づく産業振興を進めるため、投資家がSDGに沿った投資機会を確保できるよう支援する。マレーシア投資開発庁(MIDA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますおよびUNDP外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのウェブサイトで閲覧できる。

本マップにより投資家は、投資機会領域(IoA)と呼ばれる、SDGに沿ったビジネスモデルを特定し、環境的に持続可能で社会的に公正な投資機会を見いだしやすくなるという(注)。マレーシアにおいては、特に影響が大きいと考えられる6分野(テクノロジーとコミュニケーション、ヘルスケア、再生可能資源と代替エネルギー、金融、食料・飲料、インフラ)で、計15のIoAを特定した。各分野について、ビジネスモデル、投資収益率、投資回収までに要する期間、市場規模、主要事業者などの情報を含む、全体像を説明している。マップ作成には、MITIやMIDAのほか、財務省、中央銀行、政府系ファンドのカザナ・ナショナル、デジタルエコノミー公社(MDEC)、技術開発公社(MTDC)なども参画した。

投資機会の明確化にマップ活用を

発表に際しザフルル・アジズ投資貿易産業相は、持続可能な目標を達成するためには包括的な政策が必要とした上で、本マップが適切な優遇措置と組み合わさることで、SDGに沿った投資に資本を振り向ける強力なプラットフォームが実現すると強調した。

カリマ・エル・コリ国連常駐調整官はまた、持続可能性と包括性をビジネスに組み込み、SDGに沿ったベンチャー投資を確保するには、民間セクターの関与が不可欠だと述べた。同氏によれば、マレーシアの債券市場規模は東南アジア最大の1兆7,000億リンギ(約51兆円、1リンギ=約30円)に上り、2022年には260億リンギを調達した。ニロイ・バナジーUNDPマレーシア常駐代表は一方で、このように資本市場に十分な流動性があるにもかかわらず、利用可能な資源に見合った投資がマレーシアには行われていないと指摘する。投資家がリスク回避に向かう一因として、投資先(マレーシア)が地球環境にプラスかつ社会的責任を果たす基準を順守しているかどうかが不明確である点を指摘した。今回のマップは、投資家や企業に対し、SDGに資する投資の可能性を提示することで、この認識ギャップを埋めるという。

なお、ザフルル氏は同日、「国家産業ESG(環境・社会・ガバナンス)(i-ESG)フレームワーク」を9月に打ち出す方針も明らかにした。製造業を対象に、ESG基準改善に向けたガイドライン、金融支援や優遇措置、能力習得・構築、市場メカニズムの導入について明示する。同枠組みを通じ、製造業が事業の中にESGの要素を取り入れることを後押しする方針だ。SDG投資家マップとも連動させ、さらなる投資の呼び込みを図る。

(注)UNDPのサイトでは、他のアジア諸国を含む約30カ国・地域のSDG投資家マップ、および500超のIoAが閲覧できる。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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