米民間調査、2023年世界の都市別スタートアップ・エコシステムのランキングを発表

(米国、中国、英国、シンガポール、日本)

ニューヨーク発

2023年06月19日

米国調査会社のスタートアップ・ゲノムと、スタートアップを支援するグローバル・アントレプレナーシップ・ネットワーク(GEN)は6月15日、世界の都市別にみたスタートアップ・エコシステムのランキング「Global Startup Ecosystem Report 2023(注1)」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回のランキングでは、シリコンバレーが1位、ニューヨーク、ロンドンが2位タイとなり、いずれも2020年から順位を維持している。また、2022年に18位だったシンガポールは、初めてトップ10(8位)に入り、大幅に順位を上げた。一方、2022年に12位だった東京は15位と順位を下げた(添付資料表参照)。

北米のエコシステムは、上位30都市のうち50%を占めた。首位のシリコンバレーは、ランキングが開始された2012年以降これを維持している。スタンフォード大学が中心部に位置するシリコンバレーには、全米で最もハイテク企業が集中し、STEM分野(注3)の優秀な人材が多く集まっているほか、起業家同士の連携を促進する独自のイノベーション文化が確立されている。また、新型コロナ禍の過去2年間で約9万1,000人が流出したにもかかわらず、2023年に入ってから半導体のエコシステムが回帰し、対話型人工知能(AI)「ChatGPT」のオープンAIなど、AIスタートアップが続々と誕生している。また、2位タイのニューヨークについては、同市に拠点を置く生成AI企業が、2022年に計4億8,350万ドルを調達するなど、AI技術への投資が活発化していると言及した。

アジア圏では、北京が7位、上海は9位となり、いずれも前年から順位を下げた。中国のゼロコロナ政策は同国の2022年の経済成長率を押し下げたが、経済活動の再開により、テクノロジーとスタートアップのエコシステムが低迷から立ち直りつつあるとしている。また、北京の中小企業に対する強力な支援は、第14次5カ年計画(2021~2025年)で繰り返し取り上げられていると紹介された。上海については、世界有数の金融ハブであり、中国市場に参入する国際的なブランドにとって最初の進出候補先だと述べられている。同市は2022年11月、スマートデバイスやエネルギー、宇宙など「未来産業」と呼ばれる5分野の育成に向けた行動計画を発表し、これらの産業の生産額を2030年までに710億ドルにすることを目標に掲げている。また、今回8位に浮上したシンガポールについては、アジア太平洋地域の金融ハブであり、フィンテックのイノベーションが数多く誕生している点が特徴として挙げられた。また、シンガポール政府は2019年から国家AI戦略を深化させ、AIを活用したサービスの変革に取り組んでいるとしている。

15位の東京については、5,000万ドルを超えるイグジットやアーリーステージの資金調達件数が減少し、全体的な成長に影響を与えた一方、エコシステムの市場価値は前年から6%伸びたとしている。東京に拠点を置くユニコーン企業(注4)は6社存在し、ロボット開発に取り組むアールティは35億ドルと、最も高い評価を受けていると紹介している。

(注1)世界各国にある約350万社の企業データに基づき、約290の主要都市の起業環境を、業績、資金調達、接続度、市場リーチ、知識、そして人材・経験の6項目(注2)で採点し、ランキング形式で発表したもの。

(注2)(1)スタートアップの市場価値などを示す「業績」、(2)初期段階のスタートアップの成功に重要な資金調達指標を数値化する「資金調達」、(3)地域におけるエコシステム内の関係者同士のつながりと、イノベーションを創出するための地域内の基盤を測定する「接続度」、(4)スタートアップのビジネスモデルの成長性や海外展開を示す「市場リーチ」、(5)研究・特許活動の充実度を示す「知識」、(6)スタートアップが有能な人材にアクセスできる環境を示す「人材」、そしてスタートアップがどれだけエグジットを行っているかなどの経験度合いを示す「経験」。

(注3)Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Math(数学)の4分野の総称。

(注4)企業評価額が10億ドル以上、かつ設立10年以内の非上場ベンチャー企業の総称。

(樫葉さくら)

(米国、中国、英国、シンガポール、日本)

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