グリーン分野のスタートアップへのVC投資が拡大

(ドイツ)

ミュンヘン発

2023年06月06日

ドイツ復興金融公庫(KfW)は517日、クライメートテック関連スタートアップへのベンチャーキャピタル(VC)の投資動向に関する調査結果PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

本調査では、クライメートテック(Climate-Tech)を、(1)温室効果ガスを排出させない、または排出量を削減すること、もしくは(2)地球温暖化の影響への適応に寄与する技術、と定義した。長期的にみると、ドイツでは、VCのクライメートテック分野のスタートアップ(SU)への投資が拡大を続けているという。投資額は、2009年の5,300万ユーロから、2022年に155,700万ユーロに増加。投資件数は、2009年の7件から2022年に118件と、16.9倍になった。クライメートテックを除く全ての産業分野におけるSUへの投資件数をみると5.7倍の拡大で(2009180件から20221,033件)、クライメートテックSUへの投資件数の伸びは著しい。

ただし、2022年は2021年に比べて、投資額、投資件数はともに減少した(それぞれ40.4%減、15.1%減)。KfWによると、マクロ経済環境の見通しが不透明になったため、2022年の年初以降、全世界でVC市場全体が縮小、それがクライメートテックSUへの投資行動にも影響を及ぼしたという。KfW2023年もクライメートテック・SUへの投資の増加は見込めないとしているものの、KfWがドイツ国内VCに対して実施したアンケート調査では、96%がクライメートテックは将来的に成長可能性のある分野だと回答している。

2022年の主要国のクライメートテックSU数を比較すると、ドイツの481社に対して、米国1,235社、英国633社、フランス362社となった。年間投資額(20192022年平均)では、ドイツの14800万ユーロに対して、米国1685,500万ユーロ、英国186,000万ユーロ、フランス125,000万ユーロとなった。KfWは、国全体の経済力を勘案すると、ドイツのVC市場は他国に比べて小さいと指摘している。

また、クライメートテックSUのうち、シード期(創業スタート期)にある企業への投資額(20192022年)を投資元国別にみると、ドイツ国内のVCの投資が45%を占めるのに対し、スケールアップ期ではこれが17%にとどまる。KfWは、ドイツ国外のVCの投資割合の高さは、ドイツのクライメートテックSUの技術力の高さによる魅力の証左としつつも、ドイツ国外のVCの投資割合が高まることで、SUがドイツ国外に拠点を移す可能性も高まるとし、長期的には、ドイツ国内における成長段階のSUへのファインナンス機能強化が重要としている。

クライメートテックSUの主要分野ごとのVC投資額の割合(20192022年)をみると、ドイツは、「エネルギー」(ドイツ43%、世界平均41%)、「交通・モビリティ」(同16%、12%)、「工業」(同7%、6%)で世界平均を上回った。KfWはこれについて、自動車分野では伝統的にエンジニア技術が強いことや、製造業の重要性を反映したものとしている。

(高塚一)

(ドイツ)

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