マレーシア電力会社テナガ、ASEANでエネルギー・トランジション推進へ

(マレーシア、ベトナム、ラオス)

アジア大洋州課

2023年06月14日

マレーシア最大の政府系電力会社テナガ・ナショナル(TNB)は5月26日、ベトナムとラオスの電力事業者と連携し、ASEANでエネルギートランジションを推進するPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)と発表した。連携に向けて、TNBの完全子会社3社がそれぞれ覚書(MOU)を締結した。同社は覚書を通じて、ASEAN加盟国間で送電網をつなぐ「ASEANパワーグリッド(APG)構想」と、ASEANの再生可能エネルギーハブになるというマレーシア政府の目標を前進させたい考えだ。

TNBリニューアブルズ(TRe、注1)はベトナムで太陽光発電所の建設、運営、保守などを行うサイゴン・ザーディン電力(EHCMC)とMOUを締結した。再生可能エネルギーの発電技術で両社の強みを生かし、ベトナムで再エネ分野への投資可能性を模索する。

また、TNBリペア・アンド・メンテナンス(TNB REMACO、注2)はベトナム電力総公社(EVN)傘下のノース・パワー・サービス(EVNNPS)とMOUを締結した。ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイでの発電所のO&M、MROなど電力関連サービスの展開に向けて協業を目指す。

TNBパワー・ジェネレーション(TNB Genco、注3)はラオス電力公社(EDL)とMOUを締結した。ラオスへの再生可能エネルギー投資や、ラオス・タイ・マレーシア・シンガポール電力統合プロジェクト(LTM-PIP)を通じたラオスからの再生可能エネルギーの輸出機会を模索する。

TNBは2021年8月に、2050年までの温室効果ガス排出量の実質ゼロ(ネットゼロ)と石炭火力発電の廃止を目指す外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますと発表した。それに向けて、2035年までの二酸化炭素(CO2)排出原単位(発電量あたりのCO2排出量)の35%削減、石炭火力発電容量の50%削減、また、2025年までに再エネによる発電容量を8,300メガワット(MW)とする目標を掲げた(注4)。

マレーシア政府も2023年5月9日に「再生可能エネルギー戦略開発ロードマップ」を発表、電力供給量に占める再生可能エネルギー比率を2050年までに70%に高める目標を発表し、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けて国内の再生可能エネルギーの導入を推進するとしている(2023年5月15日記事参照)。

(注1)再生可能エネルギーへの投資や電源開発、資産管理などのコンサルティングを行う。

(注2)マレーシア国内外で水力や火力発電所の運用・保守(O&M)、メンテナンス・修理・分解点検(MRO)などを手がける。

(注3)マレーシア国内で水力や火力発電所を所有、管理、運営する。石炭火力発電所でのアンモニア、バイオマス混焼や、水力発電所でのフロート式太陽光発電の実証調査なども行っている。

(注4)同社のマレーシア国内外での再生可能エネルギー発電容量は2022年度時点で3,780MW(2022年度年次報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。英国で風力・太陽光発電事業(総発電容量530MW)を行っているほか、再エネに取り組むトルコやインドの電力会社へ出資している。

(山口あづ希)

(マレーシア、ベトナム、ラオス)

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