バイデン米政権、ロシアのワグネル関連企業に制裁、アフリカの金産業巡る勧告も発表

(米国、ロシア、ウクライナ、アフリカ、中央アフリカ共和国、アラブ首長国連邦)

ニューヨーク発

2023年06月29日

米国財務省は6月27日、ロシアの民間軍事会社ワグネルに関係する複数の事業体と個人に対する制裁を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ワグネルの資金源となる違法な金の取引に従事したとして、中央アフリカ共和国の鉱山会社やアラブ首長国連邦(UAE)の工業製品販売会社、ロシア企業など4社を金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定した。また、マリで武器取引などに関与したロシア国籍のワグネル幹部1人もSDNに指定した。

SDNには、在米資産の凍結や、米国人(注1)との資金・物品・サービスの取引禁止が科される(注2)。ブライアン・ネルソン財務次官はプレスリリースで、「ワグネルは、中央アフリカ共和国やマリのような国々で天然資源を搾取することで、その残忍な活動の資金の一部を得ている」と指摘し、今後もワグネルの収入源を断つための措置を講じる意向を示した。ワグネルについては、財務省は既に、ロシアのウクライナ侵攻への加担などを理由にSDNに指定している(2023年1月27日記事参照)。

バイデン政権の対ロシア・ベラルーシ制裁については添付資料参照。

サブサハラアフリカの金産業に関わる企業向け勧告も発表

また、バイデン政権は同日、サブサハラアフリカの金産業に関するビジネスリスクに注意喚起する勧告も発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同地域における金取引に関わる事業者向けに、ワグネルのような悪意ある組織の利益となるような活動に加担しないよう、デューディリジェンスの実施を促す内容となっている。勧告は、国務、財務、商務、国土安全保障、労働の5省と米国国際開発庁(USAID)が共同で出した。

勧告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、金産業は多くのサブサハラアフリカ諸国の経済と地域社会にとって重要とした上で、米国企業に責任ある投資を行うよう奨励している。採掘、精錬、製造、取引、最終製品の販売など全ての事業活動が対象で、これらの事業を行う際に十分なデューディリジェンスを行わないと、紛争やテロの資金調達、マネーロンダリング、制裁措置の回避、人権や労働権の侵害、環境悪化に意図せず関与するリスクがあると記した。

勧告は4つの章で構成され、サブサハラアフリカの金産業がもたらす機会、金のサプライチェーンの上流と下流におけるリスク、金産業に関わる米国の制裁、デューディリジェンスとベストプラクティスについてそれぞれ説明している。それらに加え、付属書では米国による既存の制裁措置と米国政府が支援する進行中の金関連のプロジェクトの詳細を列記している。

(注1)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。

(注2)SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。今回SDN指定を受けた企業などの詳細は、財務省のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。ウクライナ情勢に関する財務省による制裁の全容は、同省の「ロシア関連制裁」のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。制裁対象に指定した個人・企業などについては、同省外国資産管理局(OFAC)のデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでCountry欄のRussiaを選択し、Searchをクリックすることで確認可能。

(甲斐野裕之)

(米国、ロシア、ウクライナ、アフリカ、中央アフリカ共和国、アラブ首長国連邦)

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