民間企業が政府に鉄道路線のコンセッション返却

(メキシコ)

メキシコ発

2023年06月05日

メキシコで鉄道事業や鉱山開発、映画館運営などを手掛ける財閥グルーポ・メヒコは6月2日、同社のウェブサイトにおいて、同グループ傘下のフェロスールが有する合計約120キロの鉄道路線のコンセッションを連邦政府に無償で返却することを発表した。

これは、5月19日に連邦政府が公布した、民間鉄道路線の一時的接収を求める政令(2023年5月22日記事参照)をもとに、グルーポ・メヒコと連邦政府が交渉のうえ、合意した内容だ。同政令では、収用法に基づく補償の支払いはテワンテペック地峡開発公社(CIIT)が責任を持つと記載されているが、今回の合意では補償金は支払われないという。その代わり、もともとフェロスールが2048年まで有していたベラクルス州メディアス・アグアス市からベラクルス港をつなぐ路線のコンセッションを8年延長し、2056年まで同社が運営権を有することとなった。

グルーポ・メヒコの運営する鉄道は、大西洋側に位置するコアツァコアルコス港と太平洋側に位置するサリナクルス港の間を運行することは可能だが、国営企業テワンテペック地峡鉄道会社(FIT)に通行料を支払う必要があるのに加え、港と港の間で貨物の積み降ろしをすることは認められていない。

南東部での工業団地設立計画進む、進出企業にはインセンティブも

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は5月29日の早朝記者会見で、テワンテペック地峡での工業団地開発に関する入札準備をしていることに言及し、同地域への企業誘致についてもあらためて意欲を示した。連邦政府は、現政権の4大インフラプロジェクトの1つとして、2つの港の間に位置するテワンテペック地峡に10カ所の工業団地を設けて、自動車関連産業をはじめとした企業誘致を目指している。同地域に設立する企業には、賃料にかかる付加価値税(IVA)の軽減、法人所得税(ISR)の期限付き減免などのインセンティブを与える計画だ(メキシコ経済省プレスリリース5月8日付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同地域が発展し、多くの雇用を生み出すことを目的としているが、企業の生産移管に必要なインフラやサービスの整備状況は未知数だ。また、自動車産業などで重要なサプライチェーンや熟練労働力が不足していることから、産業界における南部への生産移管の意向はまだ見えてこない状況だ。

(渡邊千尋)

(メキシコ)

ビジネス短信 7740779e2dac45b7