テワンテペック地峡進出企業への税制インセンティブを発表

(メキシコ)

メキシコ発

2023年06月15日

メキシコ政府は6月5日、連邦官報で政令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、現政権の4大プロジェクトの1つである、テワンテペック地峡開発プロジェクト(2022年7月14日記事参照)で計画される10カ所の工業地帯に適用される税制インセンティブを発表した。政府が計画する10カ所の工業地帯のうち、既に6カ所については5月12日付官報に公示されており、ベラクルス州のコアツァコアルコス1外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますコアツァコアルコス2外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますサン・フアン・エバンヘリスタ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますテキステペック外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、オアハカ州のサリナ・クルス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますサン・ブラス・アテンパ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの6拠点で対象となる地域の範囲が特定されている。

各拠点で工業団地などを開発するデベロッパーと同拠点の土地を取得した上で特定の生産活動を行う企業には、所得税(ISR)の恩典と付加価値税(IVA)の恩典が付与される。特定の生産活動とは、(1)電気・電子、(2)半導体、(3)自動車(電動車)、(4)自動車部品・輸送機器、(5)医療機器、(6)製薬、(7)アグロインダストリー、(8)発電・配電機器(クリーンエネルギー)、(9)機械・機器、(10)情報通信技術、(11)金属・石油化学、(12)テワンテペック地峡開発公社(CIIT)運営審議会が定める他の生産活動だ。

所得税(ISR)のインセンティブとしては、設立(注1)から3年間の100%免除(注2)、その後3年間の50%、あるいは90%(注3)の免除に加え、設立から6年間の設備投資の即時償却(注4)がある。ただし、ISR法第181~182条に基づくマキラドーラオペレーションなど他の優遇措置を併用することはできない。付加価値税(IVA)のインセンティブとしては、本政令の公布翌日から4年間(注5)、域内の取引にIVAが課税されない。

自動車産業にとっては魅力が乏しいとの声も

今回の政令は誘致対象業種として自動車産業を挙げているが、発表された税制インセンティブは自動車産業の誘致には不十分との声が強い。その最大の理由としては、インセンティブに適用期限が定められていることがある。ISRのインセンティブは最長6年だが、自動車産業の企業が新たな土地で操業を開始して利益を上げるまでには多くの年月を要するため、実質的に減税の恩恵を得られる期間は短い。また、自動車産業が求めるサプライチェーンの開発や人材育成には長い年月を要するため、後発地域における最長6年のインセンティブのためだけに進出を決定する企業は少ないとみられている。

(注1)厳密には、進出企業が税制恩典を受ける要件を満たすことを大蔵公債省(SHCP)が認定する確認証書(Constancia)の発行時点が起点となる。

(注2)実際には100%に相当する税額控除(タックスクレジット)が与えられ、月次予定納税、あるいは確定申告納税時に収めるべき本来の税額から控除できる。

(注3)90%の免税率(控除率)が適用されるのは、SHCPが政令発効後90日以内に定める指針に基づく雇用水準を上回った企業。

(注4)ISR法が定める償却率にかかわらず、設備投資の全額について、当該設備を利用した最初の年、あるいは翌年に一括で損金算入することを認める恩典。

(注5)テワンテペック地峡開発プロジェクトの残りの4拠点については、官報公布時点で詳細な地域が定められていないため、同地域を特定するCIITの行政文書が公布された後、4年間がIVA免除の有効期限となる。なお、拠点内の取引、あるいは別の拠点に進出する企業との間の取引のみに恩典が適用できる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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