2023年下半期から緩やかな回復の一方で、高インフレが続く見込み

(オーストリア)

ウィーン発

2023年06月23日

オーストリア国立銀行(OeNB)は6月16日、6月から2025年までの中期経済予測を発表した(添付資料表参照)。2023年下半期に経済が緩やかに回復し、2023年通年の実質GDP成長率は0.5%、2024年は1.7%、2025年は1.6%となる見通しを示した。また、消費者物価指数(HICP、注)上昇率(インフレ率)は、2022年は8.6%と1974年以降最高値となったが、2023年から徐々に低下し、2025年には、引き続き長期平均を上回るものの、2.9%になると予測した。

2022年後半に新型コロナ禍後の景気回復が停滞し、オーストリア経済はロシアのウクライナ侵攻による不透明感、国際経済の低迷、エネルギー価格急騰によるインフレ率の上昇という3つの要因により、スタグフレーションに陥った。しかし、ドイツとは異なり、景気後退に陥る恐れはないとOeNBは強調。2023年下半期から予想される国際経済の景気回復とインフレ圧力の低下につれて、成長軌道に戻るとみている。2024年にはインフレ圧力がさらに改善し、内需が経済成長の柱になると予測。過去12カ月のインフレ率の平均を基に交渉するオーストリア特有の賃金交渉制度によって、2024年の実質賃金は大幅に上昇し、個人消費は前年比2.3%増となり、成長を支えるとした。2025年も個人消費が引き続き成長を牽引する見込み。

インフレ率は2023年も7.4%で依然として高い水準になると予測。消費者物価指数から変動の大きい食品とエネルギー価格を除いた、2023年のコアインフレ率は7.1%で、2022年の5.1%を上回る。高インフレの原因として、OeNBは、依然として高いガス価格と暖房代、レストランなどサービス部門のインフレ、政府の財政支援策の遅延と対象の狭さなどを挙げる。2024年のインフレ率は、エネルギー価格による影響は少なくなるものの、サービス部門でのインフレ率の低下が緩やかなため、4.1%と引き続き高い水準となる見込み。

経済が低迷しているにもかかわらず、労働市場の人手不足は続く。2023年の失業率は前年比0.1ポイント増の6.4%になるが、2025年までに6%前後まで下がる見通しだ。2023年には業界ごとの団体契約による名目賃金が7.6%増と大幅に上昇する見込みだ。2023年の実質賃金上昇率は0.7%増にすぎないが、2024年と2025年にはそれぞれ3.3%増と1.4%増になる見通しだ。

2023年に新型コロナ対策のための支出がなくなるため、財政収支の対GDP比はマイナス2.6%となり、対外債務の対GDP比も2025年までに70.9%まで下がるとみられる。

(注)EUの統一的な基準による消費者物価指数。

(エッカート・デアシュミット)

(オーストリア)

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