中国とコンゴ民主共和国、全面的戦略協力パートナーシップに関係格上げ

(中国、コンゴ民主共和国)

武漢発

2023年06月08日

コンゴ民主共和国(以下、コンゴ民主)のフェリックス・チセケディ大統領は5月24~29日で中国を訪問し、26日に習近平国家主席と会談を行った。会談終了後の両首脳による共同声明で、2国間の関係を全面的戦略協力パートナーシップに格上げすることを発表した。

共同声明では、鉱業での協力状況を定期的に評価し、両国の長期的かつ相互利益に基づいた鉱業協力を堅固なものにし、相互の信頼、実践、公平にのっとって、友好的な協議を通じて協力過程で生じる問題を解決するとした。その他、中国は引き続き企業に対して、既に合意したインフラプロジェクトの実施加速、コンゴ民主との鉱業の協力強化、新エネルギーバッテリーのバリューチェーン開発プロジェクトへの投資を支援し、コンゴ民主の産業チェーンのレベルアップや自主発展能力の向上に向けたサポートを行うとした。

また、共同声明には教育、科学技術、衛生、基礎インフラ建設、鉱業、農業、デジタル、環境、持続可能な開発、炭化水素燃料、エネルギー、防衛・安全保障などの幅広い分野で協力を拡大することを盛り込んだ。

中国資本の投資続くが、現地と対立が発生することも

コンゴ民主では、電気自動車(EV)のバッテリーに必要なレアメタルの1つのコバルトが多く採掘されている。米国地質調査所(USGS)によると、世界のコバルト埋蔵量は約830万トンで、その半分近い400万トンがコンゴ民主に埋蔵している。また、2021年の全世界のコバルト生産量は約16万5,000トン、そのうちの約7割に当たる11万9,000トンがコンゴ民主で生産された。

中国では近年、EVの需要が急速に高まっており、コバルトをはじめとしたEVに必要なレアメタルへの需要も拡大傾向にある。中国資本によるコンゴ民主への投資は活発に行われており、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、コンゴ民主でのコバルト生産の約半分は中国資本の企業によって行われている。しかし、チセケディ政権が既存の鉱業契約の見直しや新たな制度作りを進める中で、中国資本の企業と対立する場面も生じている。英国メディアは、コンゴ民主が中国企業とのコバルト・銅の合弁事業への出資比率を32%から70%に引き上げることを計画していると伝えた(「ロイター通信」5月24日)。その背景には、この合弁事業がコンゴ民主にほとんど利益をもたらさないにもかかわらず、多くの資源が流出していることへの懸念があるとされている。

(楢橋広基)

(中国、コンゴ民主共和国)

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