中小企業の経営層向けにEPA/FTAを解説、ジェトロがウェビナー開催

(日本)

調査企画課

2023年06月28日

ジェトロは623日、中堅・中小企業の経営層を主な対象として、経済連携協定(EPA)と自由貿易協定(FTA)の利活用に関するウェビナーを開催した。講師として、経済産業省経済連携課でEPA交渉や利活用促進に取り組む大滝泰史氏と、旭化成で企業通商戦略の立案、実行支援を担当する田中雄作氏が登壇した。「経営者が知るべき事業戦略とEPAのインパクト」と題した本ウェビナーには800人の参加登録があり、EPA/FTAへの関心の高さがうかがえた。

写真 ウェビナー撮影の様子(左から、ジェトロ調査部飯田主幹、田中氏、大滝氏)(ジェトロ撮影)

ウェビナー撮影の様子(左から、ジェトロ調査部飯田主幹、田中氏、大滝氏)(ジェトロ撮影)

EPA/FTA利用により得られる関税減免効果は、貿易を行う企業の競争力向上につながることが期待される。その効果は大きく、関税率5%の引き下げは、法人税率40%の引き下げに相当するとされている。日本の貿易総額のうちEPA/FTA締結国・地域との貿易シェアは8割を超えるなか、ジェトロが実施したアンケートによれば、回答企業の6割超がFTAを利用している(2022年度輸出に関するFTAアンケート報告書参照)。

一方で、中堅・中小企業の利用は、拡大途上にある。大滝氏は「制度理解が難しく、原産地証明など手続きが煩雑であることがEPA/FTAの利用に踏み切れない一因」と指摘した。また、ウェビナー中に投票機能を用いて行われた視聴者アンケートでは、「社内のEPA/FTAのメリットに関する理解が不十分」との声が約半数を占めた。これを受け、大滝氏は「(経済産業省として)手続きの電子化・簡素化に引き続き取り組む」としつつ、「まずは経営層がEPA/FTAのメリットを認識することが重要」と本ウェビナー開催の目的を強調した。

EPA/FTAを効果的に活用するための重要な要素として、田中氏は「EPA/FTA利活用に向けた機運を社内やサプライチェーン全体で醸成し、必要な体制を整備」することを挙げた。具体的な方策としては、関税率の引き下げを営業戦略と捉え、社内で通商戦略と事業、貿易実務の機能を連携させる方法が紹介された。田中氏は「貿易実務者に一任せず、経営層が積極的に関与することが望ましい」と呼びかけた。

質疑応答のセッションでは、EPA/FTAの利用手続きについて詳細な質問が複数寄せられた。司会を務めたジェトロ調査部の飯田康久主幹は「個別の案件によって必要な対応が異なる」とした上で、「ぜひジェトロの貿易投資相談を活用してほしい」と述べた(貿易投資相談の情報はこちら)。

ジェトロは6月30日から3カ月間、本ウェビナーのアーカイブ動画を配信する予定。

(加藤遥平)

(日本)

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