IMF、ラオス経済に関するIMF4条協議を公表

(ラオス)

ビエンチャン発

2023年06月28日

IMFは5月22日、ラオス経済に関する審査(4条協議、注1)の終了に当たって、プレスリリース、IMFスタッフレポート、債務持続可能性分析(DSA)報告書、声明を公表した。

IMFのラオス担当理事のローズマリー・リム氏は声明で、ラオスの歳入は歳出を上回るペースで増加し、財政赤字は2022年にGDP比で0.5%となり、大幅に減少した(注2)と評価した。今後は輸入関税や物品税、個人所得税の徴収強化などにより、さらなる歳入増が期待できるとした。さらに、銀行セクターは収益性が高く、資本も充実していると評価し、外貨不足という短期的な問題はあるが、管理可能で今後は緩和されるだろうと指摘した。最後に、ラオス政府側は経済的課題、特に公的債務の負担軽減に向けて必要な措置を講じることを決意しており、IMFによる全ての勧告を適切なペースで実施することを考慮していることや、IMFによるこれまでの支援に感謝を示しつつ、課題解決に当たって継続的な支援を期待していると付け加えた。

ラオス政府はこれまで、年1回行われる4条協議の公表について、2019年8月を最後に拒絶していたが、今回4年ぶりに公表に合意した。有識者によると、今回の審査はラオス中央銀行総裁や財務相が交代(注3)する中、友好的な雰囲気で行われたことに加え、政府がこれ以上の非公表は透明性の観点からも適切ではないと判断したためとみられる。

IMF、債務全体が持続不可能と評価

同時に公表した債務持続可能性分析(DSA)報告書(注4)では、ラオスは対外的、全体的に「債務危機に陥っている」状態と評価した。2019年報告書での「高リスク」から、評価が1段階悪化し、4段階中最低となった。現地通貨キープの下落によるマクロ経済環境の悪化や、債務額の拡大、債務支払い猶予額の蓄積、国営銀行の資本強化のための国債発行などにより債務状況が悪化したと指摘した。

対外債務の持続可能性の検証では、ベースラインシナリオ(注5)で2023~2027年に4つの債務負担指標(対外債務/GDP比率、対外債務/輸出比率、対外債務支払い/輸出比率、対外債務支払い/歳入比率)のうち、対外債務/輸出比率を除く3つの債務負担指標が閾値(いきち、注6)を超えており、ストレステスト(注7)では自然災害や偶発債務に対して脆弱(ぜいじゃく)なことを示した。

公共・公的保証債務(注8)の持続可能性についても、ベースラインシナリオで債務/GDP比率は今後10年間の予測期間にわたって債務負担閾値(35%)を大幅に超え、2022年の52%から2023年に110%へ急増、その後徐々に低下するものの、2032年でも83%と高い水準となると予測した。

これらの結果から、IMFは、ラオスは対外的、全体的に債務危機に陥っていると評価し、債務全体が持続不可能な状態にあるとした。

(注1)IMF協定第4条の規定に基づき、加盟国と行う協議で、IMF代表団が協議相手国を訪問し、経済・金融情報を収集するとともに、その国の経済状況や政策について政府当局者などと協議するもの。協議の結果はIMFスタッフが4条協議報告書(スタッフレポート)としてまとめ、IMF理事会に提出する。その後IMFホームページに掲載される。

(注2)財政赤字のGDP比は2020年の5.2%から、2021年に1.2%、2022年に0.5%と改善した。

(注3)2022年6月にブンルア・シンサイボーラボング新中央銀行総裁が就任、2023年1月にサンティパープ・ポムビハーン新財務相が就任した。

(注4)債務持続可能性分析(Debt Sustainability Analysis:DSA)とは、低所得国(Low Income Countries)を対象とした債務持続性の分析枠組み(LIC DSF)に基づいてIMFが加盟国の経済を審査する際に行う調査で、その国の債務負担指標値を債務負担閾値と比較して、「低リスク」「中リスク」「高リスク」「債務危機に陥っている」の4段階に判別する。国際開発金融機関の融資判断や、民間企業によるカントリーリスク分析にも参考にされる。

(注5)ベースラインシナリオは、さらなる外的ショックがなく、国内経済にリスクが顕在化しないことを前提としたもの。

(注6)債務負担閾値とは、債務負担指標(対外債務/GDP比率、対外債務/輸出比率、対外債務支払い/輸出比率、対外債務支払い/歳入比率)にそれぞれ定められている数値で、上回る場合にリスクと見なされる。ラオスは債務負担能力が低い(Weak)国に分類される。詳細はIMFウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(注7)ストレステストとは、ベースラインシナリオに対して、自然災害や市場資金調達へのショック、偶発債務に関連するショックなどの外性ショックを考慮し、検証したもの。

(注8)英語でPublic and Publicly Guaranteed(PPG)debtという。政府や公的機関が返済を保証した債務。

(山田健一郎)

(ラオス)

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