スリランカ大統領、2048年までに先進国入りを目指す「国家変革計画」を発表

(スリランカ)

コロンボ発

2023年06月07日

スリランカのラニル・ウィクラマシンハ大統領は6月1日、今後の経済改革の方針を示す「国家変革計画(National Transformation Roadmap)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を国民に発表した。

本計画では、構造改革を通じて今後5年間で経済を安定化させるとともに、2048年までに先進国入りするという目標を掲げた。そのうえで、今後の発展戦略として、財政・金融改革、投資促進、社会保障とガバナンス、国有企業改革という4つの柱を挙げた。さらに同改革は、民間部門からの事業提案を募り、官民合同で推進する、と強調した。

計画の要点は次のとおり。

  • ウィクラマシンハ氏が大統領に就任した2022年7月以降に実施した政策の結果として、スリランカ経済は安定化に向かい、インフレ率は70%から25.2%まで低下した。2023年3月には、IMFとの交渉を通じて金融支援プログラムを確保した。加えて、債権国による債務再編への合意や、海外で働く労働者からの送金額の増大も経済にプラスの影響を与えている。
  • 国民に不人気な政策も含む構造改革に取り組むことで、将来の繁栄につなげたい。国際競争力がある経済や持続可能な発展に向け、従来とは異なる経済へと変革しなければならない。食料不足や燃料不足などを生んだ経済危機の苦難を繰り返してはならない。
  • 財政・金融改革では、長期的に持続可能な財政と、経済の安定性を確保するための改革を実施し、スリランカ市場の信頼を回復したい。具体的には、不要な支出の停止、政府活動の合理化によるコスト削減、費用対効果の高い政府運営、自動化やデジタル化を活用した質の高いサービスの提供およびコスト削減を掲げる。
  • 投資促進は、経済活性化において重要で、スリランカを輸出志向国に変えることが目標だ。また、再生可能エネルギーやグリーン水素、デジタル化などの導入を優先する。民間部門が事業を提案し、投資規模・雇用創出・輸出への貢献・経済への貢献を基準として、閣僚や政府関係者、専門家や民間の代表者が協議する「ラボ方式」を導入する。承認された提案による経済回復の加速、新たな雇用機会創出、透明性の高い手続きによる政府機構の合理化などを目指す。
  • 社会保障政策においても、政府や関係機関、市民社会の代表者や専門家が議論を深めるラボ方式を導入し、国民が必要とする支援と救済を提供する。汚職撲滅、貧困層や弱者の保護、透明性の確保に努める。また、特別なタスクフォースやデジタル化を通じ、腐敗防止の実践にも取り組む。
  • 国有企業は、独占的な地位に基づき、非効率な経営によって多額の損失を計上し、民間投資の促進を妨げてきた。国有企業の再建に向けた改革は実施、開始している。
  • 国民全体が参画した改革を実施することで、国際競争力の向上を図り、若者の就労機会を創出する。今後5年以内に経済を安定化させ、2048年までに先進国への発展を目指す。

(大井裕貴)

(スリランカ)

ビジネス短信 3211530c261eeb53