スタートアップ創業者・経営者ら、日ASEANの事業展開を議論

(ASEAN、カンボジア、ラオス、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、日本)

アジア大洋州課

2023年06月12日

日本とASEANのスタートアップ創業者や経営者と支援機関などが6月6日、「日ASEANビジネスウィーク2023外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、ASEANでの事業展開を検討する企業関係者などを対象に、海外展開に関するノウハウや課題などについて、実例を交えた議論を行った。ASEANマーケットに入る上での契機や、事業展開の流れ、事業運営上の留意点などを紹介する一方、ASEAN発のテクノロジーで日本の社会課題解決を行う場合の要点も紹介された。

ASEANで活躍する日本発スタートアップとして、AnyMind Group(ブランドビジネス支援)、アルム(医療ITサービス)、Sansan Global(名刺・インボイスなどの管理サービス)、VENTERY Fortuna International(福利厚生サービス)が登壇した。ASEANへの事業展開の契機に関しては、創業者の思いや実感に加え、市場成長や先行者利益など事業機会の面が挙げられた。現地の事業展開に関しては、異なる国でも基本的なプロダクトを統一する一方で、セールスやマーケティングに関しては現地化を積極的に推進する事例や、自社のビジネス手法を分析して積極的に地場の事業パートナーと連携することで事業展開のスピードを上げていくこと、日本政府など公的機関による支援を活用することなどが示された。また、現地人材の採用やチーム運営に関しては、事業のビジョンに共感する人材と一丸となって取り組むことや、採用に当たってLinkedInなどを活用すること、チームの意志決定の透明性を保つことなどをポイントとして挙げた。

ASEANスタートアップによる日本進出や日本企業とのイノベーション創出については、シンガポール発のモビリティースタートアップのSWAT MOBILITY JAPAN、ASEANビジネス諮問委員会、シンガポール企業庁に加え、日本企業として、ITによる社会課題解決を手掛けるスカラ、人工知能(AI)を用いたデット・キャピタル事業を行うMars Growth Capitalがパネリストとして登壇した。

ASEAN企業とのパートナーシップに関しては、日本側が有する社会課題の解決などへの思いに共感する現地企業との協業が大切で、協業先を探す上での入り口としてジェトロなど公的機関や民間企業のピッチイベントなどが役立つということが示された。また、日本市場での事業展開については、地方自治体との提携例が紹介された。地方部で共通の社会課題が存在する中、テクノロジーで課題を解決するには、それを利用する現場担当者の熱意が重要とされた。公的な補助金・実証事業の活用によって、事業の社会的意義の周知や関係構築にも効果があるという点も挙げられた。課題としては、日本企業はパートナーと長期間の関係を作って安定したビジネスを行う傾向がある一方、その強みを理解してASEANのパートナー候補へつなぐガイド役が不足していることなどが指摘された。

(山城武伸)

(ASEAN、カンボジア、ラオス、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、日本)

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