イラクで2023~2025年度の予算が成立

(イラク)

ドバイ発

2023年06月16日

6月12日付ロイターによると、イラク国民議会は6月12日、2023年度(暦年)の予算案を可決した。予算規模は198兆9,000億ディナール(約21兆8,790億円、1ディナール=約0.11円)となり、同国史上最大となった。予算には、公共部門での50万人以上の新規雇用や荒廃したインフラ設備の開発などが含まれている。

今回は2024~2025年度の予算もまとめて審議され、成立した。イラクの国家予算は通常、単年度予算であり、会計年度(1~12月)の開始前に決定されることになっているが、政治的混乱のために後ろ倒しになることが多い。2022年度は予算が成立せず、2023年度は半年が過ぎてからの成立となった。

2023年度予算の財政赤字は64兆3,600億ディナールにのぼるとみられ、2021年度の財政赤字の2倍以上となる。同予算では、1バレル当たり70ドルの石油価格および日量350万バレルの石油輸出が想定されているが、石油価格の下落などにより、さらに財政赤字が拡大するリスクをはらんでいる。IMFは2023年5月31日付レポートで、財政支出の拡大や為替レートの切り上げ、石油減産などによって、イラクの財政が均衡する石油価格は1バレル当たり96ドルになるとしている。

予算案審議の焦点の1つが、クルド自治区の石油輸出についての取り扱いだった。アラブ首長国連邦(UAE)現地紙「ナショナル」(6月12日)によると、トルコを経由するクルド自治区からの石油輸出について、2022年2月にイラク連邦最高裁判所はクルド地域の石油輸出が違憲との判決を下した。また、イラク連邦政府がトルコに対して起こした仲裁訴訟に勝訴したことを受けて、2023年3月から輸出が停止されている。2023年4月にイラク連邦政府とクルド自治政府は石油輸出再開の合意に達したが、石油収入の管理方法をめぐって議論が続いていた。今回の予算において、クルド自治政府はイラクの国営石油販売会社(SOMO)に対して日量40万バレルを引き渡し、これによる石油収入を、イラク連邦政府の監督のもとクルド自治政府が管理することが決定した。

(オマール・アル・シャメリ、太田尭久)

(イラク)

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