EU、域内主要道路の高度交通システムサービス提供に関する改正案で政治合意

(EU)

ブリュッセル発

2023年06月16日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は68日、高度交通システム(ITS)指令の改正案で政治合意したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。改正案は、コネクティッドカー、自動運転、交通情報に関するオンデマンド型モバイルアプリケーション、カーシェアリングと公共交通機関などの異なる交通手段を組み合わせた予約・発券サービスなどの新興技術への対応を可能にするものだ。改正案は今後、両機関による正式な採択を経て施行する見込み。なお、合意テキストは現時点では公表されていない。

欧州委は、2020年に発表したスマートモビリティー戦略(2020年12月11日記事参照)において、デジタル化により温室効果ガスの排出削減や交通政策の効率化の向上を目指す方針を発表。これを具体化するかたちで改正案(2021年12月16日記事参照)を提案していた。

今回合意された改正案は、欧州委提案の大枠を維持し、ITSサービスの一体的な提供に向けて、交通データの収集、データの相互運用性の確保、またそのためのインフラ整備を、加盟国に対して求めるものだ。これにより、制限速度、一方通行、高さ・重量規制といった交通安全情報のほか、通行止めなどの交通規制に関する情報などの加盟国・企業・一般ユーザー間におけるリアルタイムでの共有が、ITSサービスとして実現する。

ただし、今回の合意では、ITSサービスに関して、費用対効果や行政能力を考慮した上で、段階的に提供するとしており、現地報道によると、一部の加盟国の要望で、改正案におけるインフラ整備の対象範囲は、欧州委提案から縮小し、主要道路に限定された模様だ。また、収集されたデータが利用可能となるのは、データにより異なるものの、2025年末から2028年末を予定している。

なお、欧州自動車工業会(ACEA)と欧州運輸安全協議会(ETSC)は、EU理事会と欧州議会による交渉に先立ち、対象範囲を狭めようとする加盟国の姿勢を批判。速度制限に関する情報は、自動速度制御装置(ISA)、運転支援技術、自動運転などにとって必要不可欠として、域内のあらゆる道路網を収集対象にすることを求めていた(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(吉沼啓介)

(EU)

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