ボルヌ首相、保育サービスの拡充プラン発表

(フランス)

パリ発

2023年06月08日

フランスのエリザベット・ボルヌ首相は6月1日、乳幼児の不足する保育サービスの拡充プランを発表した(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。2027年までの5年間に55億ユーロを追加投資し、2027年までに新たに10万人、2030年までに20万人の乳幼児の受け入れ態勢を整える方針だ。エマニュエル・マクロン大統領は全ての家庭に保育サービスを保障することを公約の1つとしていた。

具体的には、人口3,500人以上の市町村に保育サービスを組織、管理する権限を委ねる。自治体は保育サービスの需要と供給の状況を把握し、適切なサービスを提供できるよう態勢を整備する。人口1万人以上の自治体には保育サービスのワンストップ窓口の開設を義務付け、情報提供や行政手続きを一元化する。

ひとり親世帯など保育サービスを必要とする求職者の就職支援を強化するため、日本のハローワークに相当するポールアンプロワ(2024年1月から新しい機関「フランス・トラバイユ」に改組予定)と協力する。積極的な求職活動を可能にするために、乳幼児を幅広い時間帯で預けることのできる「就職支援のための保育所(crèche à vocation insertion professionnelle)」の数を2027年までに現在の700から1,700に増やす。

施設型と在宅型の保育に係る費用を統一化し、不平等を是正する。在宅保育で「認定保育ママ(assistante maternelle)」に子供を預けた場合の費用は、現行制度では保育所の2倍になるが、2025年から同額になるよう改正する。

子供が6歳になるまで受給できる保育費用補助について、ひとり親世帯の場合は2025年から12歳までに延長する。保育のための税額控除は、2023年の予算法で上限が1,150ユーロから1,750ユーロに引き上げられた。

フランスでは現在、130万人の乳幼児の受け入れ先があるが、まだ20万人分が不足している。さらに、保育所では1万人の人手が不足しており、2030年までに12万人の「認定保育ママ」が退職する予定だ。

保育の受け入れ先が見つからないため職場復帰をあきらめる女性も多く、政府は完全雇用の達成に向けた取り組みの一環として、6月中に政府が提出する関連法案に上記の具体的措置を盛り込む予定だ。

(奥山直子)

(フランス)

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