マレーシアの女性労働参加率はASEAN第7位、2025年までに59%へ

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年06月02日

マレーシアのナンシー・シュクリ女性・家族・地域社会開発相は5月15日、女性の労働参加率を2025年までに59.0%に高めると、KSIアジア太平洋戦略研究所のイベントで明らかにした。前政権下の第11次マレーシア計画(2016~2020年)でも、2020年までに59.0%という数値目標を達成することが掲げられていた。しかし、マレーシア統計局の四半期別労働力調査によると、2020年第1四半期(1~3月)における女性の労働参加率(注1)は55.8%、その3年後に当たる2023年第1四半期時点でも56.1%と目標は達成できておらず、この間0.3ポイントの上昇にとどまった。他方、2023年第1四半期の男性の労働参加率は82.6%だった。マレーシアの男女別人口比が約半数ずつであることに鑑みれば、労働参加率では男女間に大きな格差がある。

なお、世界銀行のデータから、ASEAN加盟国を比較すると、マレーシアにおける女性の労働参加率(15~64歳の女性人口比、ILOモデルによる推計値)は2021年に56.6%で、ベトナム(74.2%)、カンボジア(73.6%)、シンガポール(72.6%)、タイ(68.5%)、ブルネイ(59.1%)、ラオス(58.4%)に次ぐ7位だった(添付資料図参照)。なお、日本の同年における女性労働参加率は73.8%だった。

ナンシー女性・家族・地域社会開発相によると、管理職の女性労働参加率は公的部門で38.8%に到達したものの、政府関連企業や民間企業ではいまだに低いという。近年、政府は公的部門や上場企業などが女性の起用を推進するよう様々な取り組みを行ってきたが、民間企業の動きは鈍い。例えば2022年1月、マレーシア証券取引所(ブルサ・マレーシア)は、2021年末時点の時価総額が20億リンギ(約600億円、1リンギ=約30円)の上場企業に対しては2022年9月1日までに、その他上場企業に対しては2023年6月1日までに、最低1人の女性取締役を任命することを上場要件として義務付けた。しかし、マレーシア証券委員会によると、2023年5月1日時点で、上場企業における全役員に女性が占める比率は22.8%にとどまり、3割(注2)に到達していない。上場企業799社のうち、役員の3割以上が女性である企業は267社、役員が全員男性の企業が120社だった。

近年、マレーシアの大学卒業者数に女性が占める割合は、男性を上回っている。しかし、就労後は育児などを理由に結婚後に仕事を辞めて専業主婦になる女性が少なくない。頭脳流出や人材不足といった課題に直面するマレーシアにおいて、女性が結婚・出産しても就業を続け、国の経済活動への貢献を維持することの意義は大きい。政府と産業界とが一丸となった取り組みが求められる中、先進的な企業事例として米国半導体大手ラム・リサーチの例が挙げられる。同社は、2022年にペナンに進出して以降、作業スペースの高さ調整など職場環境の整備や、産休取得可能日数を最大26週間に延長など、女性従業員に対する数々の支援策を導入した(「ザ・エッジ」紙2023年1月16日)。製造業でありながら、同社のマレーシア法人では女性の管理職比率が5割に至ったという。

(注1)女性の労働参加率は、労働年齢(15~64歳)の女性人口に対する労働力の割合と定義されている。

(注2)マレーシア証券委員会が2021年に改定した「コーポレート・ガバナンスに関する行動規範外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に記載されている。

(エスター頼敏寧)

(マレーシア)

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