2022年の米出生数は366万人、合計特殊出生率は1.67で前年からほぼ横ばい
(米国)
ニューヨーク発
2023年06月02日
米国疾病予防管理センター(CDC)の下部組織の国立衛生統計センター(NCHS)は6月1日、2022年の出生数が前年比0.1%減の366万1,220人、女性が生涯に産む子どもの数を表す合計特殊出生率は1.67になったとの暫定値を発表した。新型コロナウイルス禍の影響軽減により、2021年の出生数と合計特殊出生率は上昇したが(2022年5月25日記事参照)、2022年はともにほぼ横ばいだった。
出生数は前年から3,072人減少し、年齢別では30代以上の出生数が増加した。特に、35~39歳の出生数は1万3,412人(2.3%増)、40~44歳は7,526人(6.0%増)増加した。また、出生数は少ないものの、45~54歳の増加率(12.2%増、1,150人増)が大きくなっている。他方、30代未満の出生率は軒並み減少しており、特に20~24歳(1.7%減、1万1,154人減)と25~29歳(1.2%減、1万2,417人減)で減少幅が大きく、こうした傾向は前年と同じだった。人種別では、前年に大幅増加した白人が5万5,124人減(2.9%減)と反転する一方、ヒスパニックは4万8,926人増(5.5%増)と、前年同様に増加を維持した。黒人は7,420人減(1.4%減)で前年に続いて減少、アジア系は4,870人増(2.3%増)と、前年の減少から増加に転じた。
新型コロナ禍の影響から脱しつつある米国だが、出生数は依然として2019年の水準(約375万人)を下回っている。また、人口維持に必要な合計特殊出生率は、死亡数が不変かつ移民ゼロの場合で2.1とされており、米国では2007年以降一貫してこれを下回っている。米国の人口は、移民の流入などが出生数の低下を補うかたちで増加している。人口増加率も新型コロナ禍から反転しているが、0.4%程度と低水準が続く(添付資料図参照)。
今回特徴的なのは、人口のマジョリティーを占める白人の出生数減少と、人口に占める割合が増加傾向にあるヒスパニックの出生数増加だ(2021年10月14日付地域・分析レポート参照)。ヒスパニックには移民出身者が多いが、国勢調査局によると、新型コロナ禍の収束に伴う渡航制限の緩和により、2022年の純移民流入は前年の約38万人から約101万人と、2017年以来の水準に回復する見込みという。一方、バイデン政権は新たな不法移民対策に取り組んでいる(2023年5月11日記事参照)。移民の流入は経済成長の観点から歓迎されるが、政治的な配慮が求められる。人口動態と併せて、こうした移民問題も引き続き重要な課題だ。
(宮野慶太)
(米国)
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