5月14日のタイ総選挙、公開討論会を実施

(タイ)

バンコク発

2023年05月09日

タイの国立大学院である国家開発行政研究所(NIDA)とアジアの報道機関の連合体であるアジアニュースネットワーク、現地報道大手ネーション・グル-プは4月29日、タイで5月14日に実施される総選挙の公開討論会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを実施した。NIDAやネーション紙などが伝えた。当該討論会は各政党から主要人物が登壇した(タイ貢献党は欠席)。英語により実施され、在タイの各国の外交官、外国特派員、有権者を前に、各政党間で3つの主要テーマ(政治的安定、外交、経済改革)に焦点を当てた議論(パネルディスカッション)が行われた。

政治的安定について、聴講者からの主な関心事項は、次期政権が公約を実施するために必要な政治的安全性が確保されるかどうかだった。パネリストの多くは「確保される」と回答する中、一部政党からは懐疑的な意見もあった。例えば、タイ貢献党から派生した国家建設党(新党)のティダラット・インチャローン氏は、法の支配がどのように適用されるかに懸念を示し、憲法裁判所によって政党が解散されることへの懸念を暗に指摘した。

外交については、すべてのパネリストが新たな国際貿易や投資協定を結んでいくことに賛同した。民主党(与党)のキェット・シットティアモーン氏は、各国との新たな協力関係の構築は、タイと相手国の相互に恩恵を与えると述べた。また、国家開発・KLA党(与党)のウォラナイ・ワニッチャカ氏は、ASEANが天然資源、人材、文化の宝庫であり、交易の要衝でもあることから、それらの強みを生かし、タイの国際舞台での交渉力を高めるため、ASEAN各国との協働を強化することの重要性を強調した。

経済改革については、タイが今後数十年にわたり成長を続けるためには大きな改革が必要とし、官僚制度の見直しが最重要との声があがった。例えば、国家開発・KLA党のウォラナイ氏は、タイの官僚制度の複雑さは汚職を助長していると述べた。その他、国民国家の力党(与党)のティーラチャイ・プワナートナラヌバーン氏は、先述の外交にとどまらず、経済面で新たな市場やビジネスチャンスを開拓するためにも、やはり2国間自由貿易協定(FTA)の促進が必要とした。その一方で、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)や、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定のような複数国間貿易協定には慎重な姿勢を示した。タイ国家開発党(与党)のワラウット・シラパアーチャー氏も、ティーラチャイ氏の意見に同意し、どのような貿易協定に参加するにしても、タイにとって有利な条件となるよう十分に準備しなければならないと述べた。その他、グリーンエコノミーの促進や、税制の改革の必要性、デジタルアクセス、若者の政治的権利、ミャンマーといった問題についても論じられた。

なお、4月24日から28日にかけてNIDAが実施した3回目で選挙前最後の世論調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、小選挙区での支持政党は1位タイ貢献党(38.32%)、2位タイ前進党(33.96%)、3位タイ統一党(12.08%)、4位民主党(4.28%)、5位タイ誇り党(2.92%)となった(注)。支持首相候補者については、1位タイ前進党はピタ・リムジャラーンラット氏(35.44%)、2位タイ貢献党はペートーンターン・シナワトラ氏(タクシン・チナワット元首相の次女)(29.20%)、3位タイ統一党はプラユット・チャンオーチャー氏(14.84%)となった。支持首相候補は前回(4月3~7日実施)から順位が入れ替わり、タイ前進党のピタ氏が1位となった。支持政党上位5位の順位に変動はなかったが、タイ前進党の支持割合が増加し、タイ貢献党に迫る結果となった。

(注)主な政党と首相候補者は2023年5月2日記事参照のこと。

(藤田豊)

(タイ)

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