従業員の減税策など含む、雇用に関する緊急措置令を実施

(イタリア)

ミラノ発

2023年05月15日

イタリア政府は5月1日、雇用に関する緊急措置を導入する法令の承認を発表した(5月1日付政府発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。年収3万5,000ユーロ以下の従業員に対する所得税や社会保険料などの低減を柱に、障害者、高齢者、未成年者などを抱える貧困世帯への対策、失業者への就労支援、職場環境の改善・安全対策、有期雇用契約の雇用規定の変更などを盛り込んだ。

最大の目玉となったのは、従業員の所得税・社会保険料など、いわゆる「税のくさび」の削減だ。この措置は2023年の予算法で定められ、既に1月から開始されている。年収2万5,000 ユーロ以下の従業員が3%の削減、年収が2万5,000ユーロ超3万5,000ユーロ以下の従業員が2%削減されていたが、今回それぞれ4ポイント追加となり、前者が7%、後者が6%という大幅な減税策となった。

経済・財務省によると、2023年7月1日から12月31日までの期間に、同措置に40億ユーロを計上しており、従業員の給与は、同期間に最大月100ユーロ増加すると試算している。

また、企業の福利厚生など付加給について、子供がいる世帯への給付の非課税額上限が3,000ユーロに引き上げられた。18歳から59歳までの貧困状態にある者へ職業訓練を拡充し、対象者を雇用する企業や団体は一定の条件下で社会保険料の免除など減税の対象とする。若年層の雇用促進も図り、職業訓練プログラムを受けていない30歳未満の若者を雇用した企業には1年間、給与の60%の奨励金を支給し、既存の免税措置や奨励金との併用も可能となる。また、有期雇用契約の契約期間はこれまで1年だったが、2年まで可能となる。

ジャンカルロ・ジョルジエッティ経済・財務相は同施策について、物価高に対する低所得層への具体的な救済策で、子育て世帯への支援も含まれており、社会的な緊急事態に焦点を当てることで、成長に向けて責任ある道筋をつけたとコメントした(5月1日付経済・財務省プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

一方、イタリア産業連盟のカルロ・ボノーミ会長は、真の課題は2024年の予算法でも減税を継続できるかどうかだとし、雇用に関する企業への減税措置については「企業は必要な人材を雇用する。インセンティブのために雇用するのではない」とやや厳しく批評した(5月5日ANSA通信)。

調査機関デモポリスが5月4日に発表した世論調査によると、従業員の減税策について、「政府の政策を評価し良い影響がある」が35%、「前向きな政策だが、期間が限定されているため効果は低い」が42%、「(良い)影響は十分ではない」23%という結果になった。

(平川容子)

(イタリア)

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