ZFと米ウルフスピード、ニュルンベルクにSiC研究開発拠点の設立を発表

(ドイツ、米国)

ミュンヘン発

2023年05月09日

ドイツの自動車部品大手ZFフリードリヒスハーフェンと米国半導体大手ウルフスピードは5月3日、ドイツ南部バイエルン州のニュルンベルク圏内に、炭化ケイ素(SiC)技術に関する研究開発拠点を設立すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ZFは2023年2月、ウルフスピードがドイツ西部ザールラント州にSiC半導体ウエハー工場を新設すると発表した際、同社への出資と共同研究開発拠点の設置を表明していた(2023年2月7日記事参照)。今回、その共同研究開発拠点の具体的な設置地域が発表された。

新設する研究開発拠点では、モジュールからシステム全体までを含めた、SiCの仕組み、生産、利用に関する研究開発を行い、市場化までの時間を大幅に短縮することが目標。乗用車や商用車などを含むモビリティ分野、産業分野、再生可能エネルギー分野での需要を中心ターゲットに定める。バイエルン州によると、投資額は総額3億ユーロで、新たに150~200人の雇用が生まれる。ホルガー・クラインZF社長は、同研究開発拠点でのSiC研究について、「欧州におけるサプライチェーンの独立を強化するもの」としている。

5月3日に行われた会見には、バイエルン州のマルクス・ゼーダー州首相、フーベルト・アイバンガー州経済・開発・エネルギー相も出席した。ドイツ連邦政府とバイエルン州政府は「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」に基づき、欧州委員会の承認を前提として、今回の研究開発拠点設置を助成する。バイエルン州は4,000万ユーロを助成する見込み。

研究開発拠点の設置地域にニュルンベルク圏が選ばれたことについて、現地紙「ハンデルスブラット」(電子版5月3日)は、クラインZF社長とウルフスピードのグレッグ・ロウ社長のコメントから、(1)日本の半導体製造会社ロームがニュルンベルク圏内にSiCウエハーの製造子会社を有するなどノウハウの集積があること、(2)ZFのパワーエレクトロニクス関連のコンピテンスセンターが州内にあることを挙げた。

SiC半導体は、電気自動車(EV)、エネルギー貯蔵、再生可能エネルギー向けなどで、需要が急速に拡大している。特にEV向けについては、SiC半導体の採用により航続距離が伸びるため、EV市場が拡大するにつれ今後、需要がさらに急増すると見込まれている(2023年2月7日記事参照)。なお、ZFは2023年4月、スイス半導体大手STマイクロエレクトロニクスとSiC半導体の複数年供給契約を締結している(2023年4月21日記事参照)。

(高塚一)

(ドイツ、米国)

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