イノベーション庁、国内情勢を踏まえたテック業界への影響を発表

(イスラエル)

テルアビブ発

2023年05月09日

イスラエルのイノベーション庁(Israel Innovation Authority)は5月1日、司法制度改革に伴う混乱(2023年3月29日記事参照)がテックエコシステムに与える影響について分析した声明書を発表した。

同声明書によれば、米国ナスダックとテルアビブ証券取引所のテクノロジー関連銘柄の株価指数を比較すると大きな差異が生まれている。国内で資金調達が難しくなれば、企業の国外移転や廃業が増加すると見ている。また、イスラエルのテック企業を対象とした調査でも、海外に進出する企業が増加していることが分かった。法人の登記だけでなく、競争力の源泉となる知的財産の登録についても、国内ではなく海外で行うことを選択する意向を示す企業も一定数存在している。これにより、将来的な納税額の減少に伴うイスラエル政府の大幅な収入減につながるという可能性も指摘されている。

世界的にハイテク分野への投資は冷え込んでいるものの、イスラエルに固有の事情である、一連の司法制度改革問題に起因する市場の先行きの不透明さによる影響も大きく、政府による対応策の実行も求められるとしている。具体的には、クネセト(国会)での審議が進んでいる「知識集約型産業促進法」の速やかな成立や、イノベーション庁によるハイテク企業の資金調達需要に応える支援プログラムの実施、イスラエルのテック企業への投資促進のためのインセンティブとなる規制環境の整備などが挙げられている。また、同声明書による報告を受けたオフィル・アクニス科学技術相も、政府が迅速な行動を取る必要性を認めている。

ムーディーズによるイスラエルの信用格付け見通しの引き下げや、スタートアップ企業による海外への資金移転など、司法制度改革による政情不安がイスラエル経済へ与えた影響はこれまでも報じられてきた。政府内でのリサーチから生まれた今回の分析・提言が事態の改善に向けた動きにつながるか、今後に注目が集まる。

(太田敏正)

(イスラエル)

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