ネタニヤフ政権、国内外の反発を受けて司法改革を延期

(イスラエル)

テルアビブ発

2023年03月29日

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は3月27日夜に会見を開き、同政権が進めていた司法改革を一時停止することを表明した。同改革の立法化に向けたプロセスは、少なくとも4月30日に次のクネセト(国会)が開会されるまでは延期されることとなる(3月27日付「タイムズ・オブ・イスラエル」)。

司法改革は、最高裁判所に対する政府と国会の関与を拡大する内容で、三権分立を危うくするとして、国内外から懸念や反発を受けていた。国内では2023年1月から12週連続して週末にデモが行われるなど各種抗議行動が続いており、同改革推進への反対を表明したヨアフ・ギャラント国防相が3月26日に更迭されたことをきっかけに、さらに大規模化していた。27日には主要労働組合の呼びかけに応じて、企業や医療機関に加えて、ベングリオン空港でも職員がストライキを行うなど、社会の混乱につながっていた。こういった動きを無視できなくなったネタニヤフ政権が当初の強硬路線をやむなく変更し、同改革をいったん凍結したかたちだ。

同報道によると、司法改革案の立法に向けたプロセスはいったん凍結されたものの、ネタニヤフ首相は今後も何らかのかたちでこの改革を進めることを目指すと発言しており、連立与党内の極右政党や宗教政党からも相次いで同改革推進に意欲を見せる声が上がっている。一方で、反対派からは、ネタニヤフ政権による今回の凍結は単なる時間稼ぎであり、同改革案の完全な取り下げに向けて抗議行動を継続すべきという意見もあり、国内の混乱が収束するかは不透明だ。

ネタニヤフ政権が改革を強引に進めようとすれば、国内外からの猛反発は必至だ。反対に、推進プロセスを停止しようとすれば、極右政党や宗教政党の連立離脱につながりかねない。イスラエルの内政は予断を許さない状況が続きそうだ。

(太田敏正)

(イスラエル)

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